昭和の忘れもの。

1960年生まれの青ん坊語り。

リハーサルスタジオ[都内]

マチュアバンド暦は長いので、実際に使ったスタジオについて書いてみる。

※これらはあくまで個人の感想です。私の印象がすべてではないことを前提で読んでください。

 

都内のターミナル駅(主にJRと私鉄が交わるとこ)から徒歩圏内にあるスタジオはチェーン店展開しているところが多い。おそらく金融機関からの不動産情報と投資できる資本(お金)の問題だと思うけど。

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 スタジオPENTA(ペンタ)
ペンタがスタジオの価格の相場を作っていると言っても過言ではないと思う。スタンダードなスタイル、サービスもPENTAに代表される。マンション界のライオンズみたいなw

 

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渋谷、新宿、池袋、吉祥寺とターミナルの駅徒歩圏内にあって、器材もメンテされていて店員の応対もしっかりしていて気持ちいい。どれも及第点に達していると思う。

都内、首都圏でバンド練習をするならまずはペンタってことで何ら問題はない。
マイクを数本借りてもすべて無料というのもいい。

 

部屋の吸音もなかなか良いので他のパートの音もちゃんと聞こえる。作りや機材の取り揃え(レンタル楽器や、小物の販売等)も現存の音楽リハーサルスタジオの標準と言っていい。

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 音楽館
早くからチェーン展開をしたスタジオである。常設器材の種類(アンプやドラムなど)はペンタと同じ程度のものをそろえている。また、時間帯や部屋によっては安いものもある。場所も新宿、渋谷を始めとして駅から近いところにあるので交通便はいい。

ただ、壁の吸音と器材のメンテナンスが足りてない。


HR/HM系のバンドでなくとも音が部屋の中をまわってしまっている感じがしてボーカルは、しんどいと思う。

機材のメンテは当たり外れありあり。鳴らないアンプがそのまま置いてあることもあるので注意。(クレームが来てから修理に出すのでしょう)


 スタジオノア
ここはペンタよりも若干価格が高いけれど、常設器材はいい。オプションで使えるアンプ類も充実しているし、それぞれ器材のメンテナンスもしっかりしている。

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専用駐車場も設置してあり(有料だけど安い)学生よりも少し上の社会人バンドをターゲットにしている感じです。

狭い部屋でも、広い部屋でも各音がちゃんと聞こえてくる。人気があるのがわかる。

他のチェーン店系スタジオよりも作りは頭ひとつ抜き出ている。

逆に他のスタジオはノアを手本にしてほしいくらいだ。

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 Bass on sound スタジオVOX
中野サンプラザの地下のVOX中野店はスタジオの部屋数が多いから安心して予約ができる。 明日スタジオ借りよう!と思ったら、まずはネットで空き状況を調べればいい。そういう今のユーザーのネット環境などは先取りしている。価格はペンタより少し安い。
ここの良さは店員の教育がしっかりとなされている点。おそらく都内1でしょう!対応がすばらしい。

 

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ネットで予約できるホームページのシステムも先取りですね。またネットでユーザーの意見を聞いたり、無料レンタル器材も多かったり、と企業努力が随所にうかがえる。また楽器メーカーとタイアップした企画も行っている。

(エフェクター、バスドラペダル、コンデンサーマイクなどの無料体験貸し出しなど、使ってもらって、良さをわかってもらって購買意欲に結び付ける努力ですね)

経営サイドがユーザー視点に立って、スタジオに根付いてもらいたい気持ちが伝わってくる企画だ。こういう企画をやっているとHPを見る機会も増える。古き、既存のスタジオにはないものがある。高田馬場店にはバンドじゃなくて、ボーカル専用の大きな部屋もある(ブースではない:写真参照)

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 スタジオリボレ
某大手楽器店が経営しているスタジオなので、たまに面白い企画がある。
いいギターやベースを無料貸し出ししたりすると言ったような企画は普段5万~10万くらいの楽器しか使ったことのないアマチュアミュージシャンにはうれしい。


しかしながら音を考えた部屋の設計とは言えない。特に人数が5人、6人などのバンドでは音の分離が悪くてやりづらい。L字型のスタジオなんて、向こうで誰がどう弾いているのか見えなくてアイコンタクトは無理。そのあたりは価格に反映させるか?機材のメンテのサイクルを早めるなどの工夫がほしい。店員教育もけっして褒められたものじゃない。

 


 ゲートウェイ

機材の種類、店員の接客サービス、ロビーの作り、は及第点。さらに価格は安く設定してあって良心的。

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ところが肝心の部屋の吸音がダメ。ポップス系のバンドでもベースとドラムがしっかりとビートを叩いたら、低音がまわってしまって使えない。アコースティック系のバンドには良いのかな?

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しかし、せっかくギターアンプのヘッドなど人気機種を無料オプションで取り揃えているのに、その力を発揮させられない。うがった見方をすれば、客寄せ的な?アンプヘッドになっている。

とにかくスタジオは部屋の良さが一番大事なのに、残念。ロックでなければよしとするか?

 

 

 サウンドタワー

代々木の音楽専門学校がやっているスタジオで2店舗だけ営業。

 

同じ経営陣の運営している専門学校の生徒たちやサークルなどで使うことも多いが、一般の客も利用できる。

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スタジオの広さはそれなりに確保されているが、形が台形なので5人以上のバンドだとリハーサルとしては少々使いづらい。

部屋の吸音はけっこう良いが、機材が今ひとつ。特にロック系のバンドが利用するにはギターアンプ類をもう少し充実させてほしいところ。アコースティック系のバンドには良い。

 

店員教育も今ひとつで、会員の特典の使い方などが浸透していない。システムとしてはサービス面も考えられているのに、実際のユーザーはどれだけ有効利用しているのだろう?結局使い始めは悪くないと思うものの、長く使っていると疑問が多々出てくると思う。(入会費用、年会費、ポイント?とそれぞれの特典など)

 

良い点としてはミーティングルーム的な部屋も各スタジオごとにあって、コンセプトは悪くない。リピーターにとっての魅力に欠ける。ハコは悪くないのでユーザーの声をひろう経営努力がほしい。

 

クラウドナインスタジオ

都内と言っても町田にひとつ。それ以外は川崎、横浜(2店)、厚木と都心から少し離れた都市にある。おそらく地代に経費をかけることを軽減させて、良質のスタジオを作ろうという意図でしょう。私は横浜店しか利用したことは無いが、店内はとてもきれいだし、店員の対応もよかったです。料金はごくごく標準的。まぁ良心的と言っていい。

郊外のターミナルで営業していくことで、仮に都心の地代の2,3割安くできるのであれば、その分サービス面を充実させる、もしくは稼動率が少なくても経営していけると言うことでしょう。事実、アンプ機材等も今のところ傷んでいるものはなかったし。

バンド人口が某アニメの影響で高校生に広まって、都心でないローカルなバンドが練習することがいいかと思う。そういう意味では、マイナーな駅でも近くに学校があるということで経営が成り立つのもわかる。

 

 

 

 その他
・個人経営で一軒(もしくは2,3軒程度)でやっているスタジオがある。
これは交通便の良さ、悪さ、器材の買い替え(メンテ)などで、大手に遅れをとるところは多いが、良心的な価格設定になっているお店がいくつかあった。


小規模経営のスタジオは大きく宣伝はできないものの、インターネットで検索すると出てくるのでいろいろと調べてみるといいと思う。

私は都内で練習することが多いけれども、地元横浜では、良心的なスタジオをいくつか知っている。

 ※スタジオジャスト(横浜市金沢区

京急線能見台駅から徒歩5分ほどのところにある。

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・スタジオの部屋数が多い(アコースティック用含めて9部屋)

・無料の駐車場が5台用意されている。

・スタジオの機材はかなり本格派。録音用にimacまで設置されている部屋(Hスタのみ)もある。

・ロビーが広い(ミーティングにじゅうぶん)

・レコーディングスタジオは有名ミュージシャンやスタジオジブリなどが録音に使っているので、本格的なレコーディングを考えているなら、そちらもオススメ。

 

こういうローカルなスタジオをネットで検索する場合は、[ 駅名+音楽スタジオ ]で入力してみる。でないと大手のチェーン店に埋もれてしまう。

ちょっと細かい範囲で検索してみると意外な場所にスタジオがあるものです。

 

また、軽音楽だけでなく、ピアノ練習室、吹奏楽などの楽器練習室などを提供しているお店もある。防音の精度は低くても、気兼ねなく練習したい人にオススメ。

川崎市の音楽スタジオ(リハーサル レンタル 貸し)|スタジオアイシャ

 ※こちらも川崎市だけれど、都内からのアクセスはいい。

 

・公民館のような地区センターにもバンド練習できる施設がある。ただしこれは予約が2ヶ月先くらいまで埋まっているので「じゃぁ来週末に練習しましょう!」なんてすぐに空き枠探しても、ほぼ無い。(平日の午前中ならあるかも?)

 

器材も音響もまちまちなので(ひどいところは会議室兼用で、ただドラムとアンプがあるだけ)価格が通常のスタジオの3分の1程度で(日曜昼間の4時間で3000円程度とか!?)

安くていいけれど、いかんせん使ってみないとわからない。

 

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※↑は調布にある文化センターの音楽練習室の料金表 午後1時~4時半までで1900円。

 ドラムセット、ギターアンプ、ベースアンプ、ボーカルPA、など音響設備はプラス1700円で、合計3時間半で3600円。文句無く安い!さすがに予約は取りにくい。(2部屋のみ)

(基本3ヶ月先の抽選申込みから受付が始まるのでそれが第一優先。抽選後の空き枠があればいつでも予約できる)

 

ただし公民館や区民センターなどは価格は安いのだけれど、ほとんどがサービス面では充実していないのが現状だ。

 

例えば途中でギターの弦が切れても、換えの弦を売っているわけでもない。電池くらいなら、近くのコンビニまで走ればいいけれど。ピックをなくしたとか、ドラムスティックが折れちゃったとか、、そういった小さなアクシデントも考慮して(トラブルにもある程度備えて)練習に行かないと残念な練習になってしまう。最悪はアンプが壊れてしまった、、となっても、代えのアンプがないところもある。

 

また予約や使用に関して地元民優先などのしばりもあるので、まずは各地区センターのホームぺージを参照に直接問い合わせしてみる必要がある。

 

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民間のスタジオの良し悪しは、ある意味価格に比例しているので単純明快です。広い部屋は高く、オプション機材(レンタル機材)もいいものは高いです。


それでも標準価格帯はやっぱり古き大手のPENTAが相場を作っているように思います。
1時間3500円と聞いたら高いと感じるし、1時間2000円と聞いたら「狭いの?ボロイの?」と心配します。
まぁ、大学生や社会人バンドになると、スタジオ終わってからの飲み代のほうを調整すればいいような気もしますので、あまり関係ないのかもしれません(苦笑)

 

楽しいバンドライフを。

 

高級ギター。100万超。Michi Matsuda 他

最近セミアコづいてる青です。先立って知人から購入したYAMAHAのSA1200。


G&B Jams: Dayán Abad - Yamaha SA1000

この動画はSA1000ですけど音はほぼいっしょです。

この動画はかなりリバーブエコーかけてますけど、まぁ、、気持ちいいもんで私も
クリーントーンのリバーブ調整で先日2時間ほどいじってましたw
「フツウの音」→「フツウで良い音」にするのがテーマで。
「お!?けっこういいじゃん!80点!」なんて思った音を生録してみて聞くと、これがずいぶん違う。最近はスタジオでも大きい音出してそれを生録してみたけど、まだまだいい音に達してないと痛感。まっ、腕が達してないんだけどね(^^;たははw

 

で、今回は高いギターの話。


Michihiro Matsuda, luthier - Montreal guitar Show 2012 by Jean-Luc Thiévent - PART I

この動画は倍音の多さとリバーブが気持ちいい。アメリカで活躍しているルシアー(ギター製作職人)こと松田氏のギター。


価格を調べたらざっと200万超え・・!

(なんだか12弦みたいなすごい倍音w)
ブレーシング(ボディの中に貼られる木片:残響や強度を決める)は独特のものがたくさん施されてるらしい。。

 

楽器メーカーは儲けようとすると、大量生産になって、つまらない作品をたくさん世の中に出してしまうことが多い。

でも彼は「そんなことにはまったく興味無いぜ!最高の音を独自のデザインで」みたいなスタンス。
こんな個性的、いや独創的ですばらしい楽器を作っている人がいてうれしい。


Matsuda Guitars - Designing Your Best Sound (日本語)

 

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貧乏性な私は外食で食べる料理ひとつとっても昔は「高い値段で美味しいのは当たり前」いかに安く提供できる美味しい料理を出せるか?が肝だと思ってきた。(いわゆるコスパ


だけど。
だけどね。


「どんだけ高い食材使ってもいい、何日かけてもいいから、生まれてこのかた食べたことのないような最高に美味しいものを作ってくれ。」
と注文された料理人が出す料理がどれだけすばらしいのか?は「料理人の度量のひとつ」だと思う。(美味しんぼか?)

つまり「高くても行く価値はある」ってな感じ?

ウン十年前のバブルの功績で、こんな私でも高級料理店なんぞに行ったことが幾度とある。20代で(幸か不幸か?)贅沢な味、店ってのを経験しちゃったもんで、こんな偉そうな記事も書いてるわけです。今はランチは300円までだよなぁ・・なんて感じだけどねw 

 

それは楽器、ギターでも同じで。

各メーカーにはフラッグシップモデルというものがある。

贅沢に木を使って、いいものを使って、いい職人が研鑽したなら、価格は高くてもいい!というものを各メーカーは作っている。

車で言うならF1みたいな??


マーチンはD-45という100万くらいのフォークギターを作った。


Martin D45 - How does it sound ?


オベーションも120万くらいのアダマスってエレアコを作った。


【オットリーヤ動画】Ovation Super Adamas 1687-9 (1984年製)


フェンダーはギター職人の名前を刻んである60~100万くらいのストラトキャスターを作った。


Fender Custom Shop 1961 Stratocaster Relic Masterbuilt by John Cruz


コリングスはオールドマーチンの再現(材とか工程とか設計とかを今の職人が駆使して手作りで製作)として100万~150万のフォークギターを作った。


Collings Guitars Demo Video - Collings D1A Dreadnought Acoustic Guitar


パーカーは200万超のアーチトップギターを作った。


Ken Parker, Stella model - Montreal Guitar Show 2012 by Brice Delage

そんなバカ高いギター誰が買うんだよ!と思う。

でも寿司ならわかる? 

回転寿司で高い色の皿選んで食べてもせいぜい2千円程度のところ、寿司屋のカウンターで3~5万払うのに近い。


高い寿司なら、食べたことある人は軽く100万人以上はいるだろうから、「そんな寿司誰が食うんだよ!」とは思わないもんだ。

だけど2千円じゃ食べられない寿司となれば、すぐに1万2万はいくわけで。

 

価格ってそんなもんw

 

そこにはそれなりの需要がある。今はユニクロみたいな、それなりの定番を安く大量に売る店が企業としては大勝する時代だけどね。

 

ただ、服に着心地があるように、ギターも弾き心地ってのがある。楽器は全部そう。もっと広く言うなら「道具」はみんなそう。上で紹介した動画に出てくるギターたちは総じて弾きやすい。そして、微妙なニュアンスを正確に伝えてくれる

 

弾き手が「このくらいの強さ」と思った音が、ちゃんと「このくらい」で出てくる。

そして、それは名手ほど感じる。だから下手にはわからないけど、わかる人には驚くほどわかる。そこにも大きな価値はある。バイオリンで有名なストラディバリウスも弾き手が魅了されるらしい。それは単純に音色だけじゃないって話だ。

事実、1流ミュージシャンのレコーディングではそんなに高いギターでなくても音色がいいから使われているものはたくさんある。

 

服でも、車でも、楽器でも、料理でも、一度最高のものを体感することは大事だね。たとえ「どこがいいのか?まったくわかんない」って感想でも。

 

冒頭で書いた日本人のルシアー、ミチ マツダ氏が作ったギター、一度弾いてみたいなぁw(ピカソかっ!)

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でも今ロトが当たったら、ほしいのはコリングスw

Collings /OM2H T コリングス

Collings /OM2H T コリングス

 

 

 (おわり)

映画「あん」レビュー(ネタばれ少々あり)

先日、河瀬監督最新作の「光」を観てとてもよかったので同監督の前作「あん」をNetflixで観た。

 

「光」についてはこちら。

 

aonbo.hatenablog.com

 

今回は少しネタばれがあることを先に述べておきます。具体的なネタばれは冒頭場面の説明程度です。ただ、描かれている内容の核たるところ、テーマについて書きましたので、映画「あん」について興味がある方は先に観てからこのブログを読まれることをオススメします。

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桜並木が満開な住宅街の一角。

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ゆっくり歩く老女。

樹木希林さん演じるこの老女(徳江)が桜の花を仰ぎ見ている様はなんともいい絵だ。

少しさびしく、少し切ないピアノの調べ。
(監督はきれいなピアノの曲が好みなんですね)
ヨーロッパ映画のような作り。きれいな春の場面。

 

町角の小さな「どら焼き屋」さんの店長のところに「働かせてほしい」と老女がやってくる。

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そこから“店長さん”と“老女”の交流が描かれていく。


題材としてはとても重い部分がある。

けれど、この老女、店長、そして高校に進学する気のない女子中学生の合計3人のそれぞれの「自由」がテーマである。もう少し言うと「不自由さ、囚われからの脱出」とでも言おうか。

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「自分はこうありたい。だけど許されない社会」が目の前にある。


囚われの中にいるのはつらい。外に出るのは大変だ。大変だけれど外へ出るんだ。自由になるんだ。自由はいい!と言う思いが観ているこちらにやってくる。

 

老女は50年以上囚われて生きてきた。

店長は数年囚われていたし、そこから出ても自由はなかった。

女子中学生は、今自分が自由じゃない、囚われているのを感じた。

こんな3人が3様に自由を求めて動き出す。

 

徳江がドラ焼きの中にある「あん」を作る。

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お店の中で煮ている小豆が「どんな旅をして、どんな日々を経てこの店に来たのか」を小豆から聞くんですと語る老女。

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カゴの中の小鳥の声に耳を傾ける老女。

冒頭の桜の木を仰ぎ見ていた老女は桜の声を聞いていたのだろう。

 

 

全体を通して、先に観た河瀬監督の最新作「光」同様ゆっくりな運び。


ドキュメンタリー映画のような会話。


出演者の好演。すばらしい映像。印象的な会話と絵。

河瀬監督のタッチ、切り取り方、好きです。

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※この場面すごくよかった。

 

個人的には、絶望の闇の先に見える「光」を描いた「光」の方が好みだけれど、「光」の場合は、認知症の親の介護やだんだんと自分の能力が失われていく様など、若い世代にはピンと来ないところもあるかと思う。しかしその分、私のような50後半の者には生々しくて重い。つらい。

 

逆に「あん」は、誰が観てもつらい半生を生きた老女を描いた分、そのつらさに「わかりやすさ」がある。これは世代を超えた老若男女に響く話だと思う。

 

ただ、「この人は過去に何があったの?」と言う疑問から「実はこういう人だったんです」という流れで話を進めていくと「あー、なるほどね」で終わってしまう部分がどうしても出てくる。それが残念だ。

 

推理小説などで、犯人とそれを追う探偵だけがわかっている部分をお客に種明かしして終わる手法は、その内側にあるものが薄れてしまうような気がする。種を明かして納得させることに主眼を置いてたわけじゃないのに。。

 

描きたかったのはその内側なわけで。

 

そういう点から考えれば、これは差別や抑圧に主眼を置いたものでもない。(もちろんそういう面多々あるんですけど・・社会派の映画じゃないわけで)

 

誰もが何かに囚われているけれど、自由はいい。誰でも自由になれる!自由に生きよう!という、原作のドリアン助川さんの熱なんだと思う。

 

先にも書きましたが俳優さんたちの好演、カメラワーク、それから、もちろん脚本、流れ、BGM、編集(間というか、時間の取り方)などなど、すべてにおいて秀逸です。何より丁寧にしっかりと作られている作品だと思います。

 

それにしても希林さんの演じる「徳江」の表情・声は特筆ものです。

(これは「光」のラストでもじゅうぶん伝わってきた)


こういうお婆ちゃんが自分の知り合いにいたかのような存在感。

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※希林さんじゃなきゃ出ない味。

彼女無しで撮ることは考えられないほどの監督の惚れ込み様が伝わってきましたw

ドリアン助川さんからの要望がキッカケでキャスティングされたようです)

 

河瀬監督、熱いですね!