昭和の忘れもの。

1960年生まれの青ん坊語り。

「アンと言う名の少女」1~3

毎週日曜夜にNHKでやっている「アンと言う名の少女」を第1回から見たら、とてもていねいに「赤毛のアン」が描かれていて、久しぶりにはまった。

 

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この作品をNetflixで全部見ることができると知り、さっそく続きを。

で。

これがシーズン1~3まであって、全部見るのにはかなりのボリューム。

週末だけ見るようにして、1度に3話くらいのペースで観た。

 

(ここから先はネタばれにもなるので、今見ている最中の人はご遠慮されるか、もしくはご理解の上で読んでください)

 

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小学校の学級文庫にあった「赤毛のアン」はずいぶんとカットされた児童文学でしたが、今回のドラマは世代を問わず楽しめる社会派のヒューマンドラマに仕上がっていました。

 

とても雑な言い方をさせてもらうなら

「つらいことを全身で受け止めて、まっすぐ立ち向かう少女の奮戦記」であり

「前向きにがんばるアンのまわりにいるすてきな応援団の話」でもあります。

 

そのすてきな応援団の第一人者はアンを孤児院から引き取った養父母(この二人は夫婦でなく兄妹ですが)のふたり。

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※養父母は「孤児院から男の子を紹介してほしい」と言ったのに、女の子が来てしまったから返しに行く?

 

冒頭のシーンで養父がつぶやく「私たちが変わる」と言うセリフ。深いです。

 

言うなれば、アンが孤児院時代から新しい生活になって、文字通り「人生が変わる」こと以上にアンのまわりの人たちが心動かされて変わっていく物語でもあります。

 

何より、アンの養母のマリラが、養母から「母」に変わっていく様が何よりすばらしい。

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(演じられた女優さんジェラルディン・ジェームズハイトさんにはとりわけ大きな拍手を送りたいです!)

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話の中で取り上げるテーマは100年以上前の原作とは思えない。まさに現代にも通じるものばかりです。

 

・社会の中の格差・偏見

・人種差別や民族差別

・広い意味での教育問題、国家政策

ジェンダー

・性差別、性暴力

・旧態然とした悪しき慣習

その他、依存症や、詐欺などの話もあり、現代社会でも抱えている多くの社会問題が盛り込まれています。

 

劇中、多くの事件、多くの問題が彼女や彼女のまわりに起こります。

それらの問題が解決に至るプロセスにしても、どれもが現代に通ずるものばかりです。そしてそして、そういう問題に立ち向かうアンを見るたびに好きになってしまいます。

 

もちろんアンだって、ひとりの少女(人)ですから、傷つき、悲しみ、時に涙を流し、時に癇癪を起したり、落ち込んだりもします。

それでも、たくさん泣いて、たくさん癇癪を起こした後の前向きに進んでいく姿が素晴らしい。

 

とは言っても、この話は勧善懲悪のような単純なものではありません。

 

悪しき慣習から圧力をかけてくる人たちだって、先行き心配で、不安で、やっとこさ見つけた考え方を次世代の子たちに伝えたい気持ちがあります。

そんな現代の日常のどこにでもある「おせっかいな暴力」についても細やかに描かれています。

 

それとは別に、学校や、町で直接的に暴力をふるう人、犯罪を犯す人も登場しますが、彼らがアンと関わっていくことで変わっていく心の機微も描かれています。

 

全編を通して写し出される映像がまたすばらしい。

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プリンスエドワード島灯台

 

 

大草原を馬に乗って駆ける姿は神々しいほどです。

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そして製作。

 

原作に描かれている内面の動きまでしっかりと再現したいという、制作側の思い入れがよーくわかるとっても素敵なドラマに仕上がっていました。

 

監督(何人かいるのかな?)をはじめスタッフ、脚本、演出、カメラワーク、音楽、美術、もちろん役者さんたちの名演とどれを取ってもすばらしかったです!

 

※観終わってから考えると作家のモンゴメリーが「赤毛」のコンプレックスを強く抱く女性を主人公にした事にも至極納得です。

 

「はつかねずみと人間」(主に貧富の格差)とか「Rootsクンタキンテ」(主に民族差別)とかには、これだけ多様な社会問題まではなかったと。

とりわけ「アンと言う名の少女」は世界観が明るいのでこのような話とは明らかに一線を画していますが。。

 

ただ、このドラマ、、カナダでのシーズン3の最終話 放映直後に「打ち切り」となったそうです。

wikiによると「CBC社長のキャサリン・テイトは、長い目でカナダの産業の害になるNetflixとの共同製作はやめると発言していた」とあります。

 

シーズン3で起きた未解決の大きな問題を残したまま終わってしまったのが非常に残念です。

Netflix以外での共同製作、もしくはカナダのCBCの単独製作で続行するのは難しいのでしょうか。。難しそうですね。。

 

この作品、うちのツマさんも大好きで、気が付いたら「日本初の全文和訳:赤毛のアン」を購入してましたので、(あの美しい風景とあの個性豊かな登場人物を思い浮かべながら)私も読もうと思います。

 

赤毛のアン (文春文庫)

赤毛のアン (文春文庫)

 

 

最後に余談。

孤児院の少女のシンデレラストーリー的な「あしながおじさん」と比べちゃぁいけません。良し悪しは別として。

 

 

 

 

 

Carpet Crawlers :Genesis 訳してみた

74年のジェネシスのアルバム「幻惑のブロードウェイ」に収録されている名曲。

Carpet Crawlersの歌詞全文訳にチャレンジしてみました。

 「幻惑のブロードウェイ」by GENESIS

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 タイトルの[ The Lamb Lies Down on Broadway ]を直訳すれば「ブロードウェイに横たわった(寝ている)子羊」ということですが、「ブロードウエイで眠りこんでしまった子羊の夢想」と言ったニュアンスでしょうか。

 

アルバム作品としては全編通して、迷える子羊こと、青年ラエルのシュールな冒険譚(幻想?)です。

 

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物語の始まりは、タイトル曲から「夜明け前のブロードウェイに倒れこんでしまった子羊」を歌った曲。

 

か弱き子羊こと主人公のラエルは繁華街の中で倒れこみ、そして夢想の旅に出る。その旅の先々でのエピソードと彼の心象風景が曲に合わせて展開されていく。

 

物語の中盤で、主人公のラエルは「性に目覚めた時(女性との初体験?)の記憶(妄想?)の中を彷徨う。(Counting out time)

 

その後に意識を取り戻した場面で始まるのが、この Carpet Crawlersである。

 

歌詞、主題が難解と言われるロックオペラ「幻惑のブロードウェイ」の全容、詳細はまだまだつかめきれていないのですが、大好きなこの曲を訳してみました。

 

この曲の題名Carpet Crawlersの直訳をすれば「絨毯でクロールしている人たち」となります。

 

クローラー】というのは「這い這いする人=赤ん坊」と訳されているものが多いけれど、水泳のクロール泳法を想像してみて、手足をつかって這いずりまわるように「もがいて進む人たち」と訳してみました。

 同じように、カーペットの意味を掘り下げると「羊の毛でできた暖かい絨毯(敷物)」=「やさしい感触の温かい敷き物」

言うなれば【生あたたかい日常生活の中で、もがいている人たち】といった感じでしょうか。

 

これで、この曲の作者のニュアンスがだいぶ伝わってくるかと思います。

 

この解釈が、どこまで作者Peterの意図と合致しているのかわかりませんが。。

 

では。全対訳(長いです)

 

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Carpet Crawlers

 

He returns from his mixed-up memories to the passage he was previously stuck in. this time he discovers a long carpeted corridor.

混乱した記憶から戻ると、さっきまで立ち往生していた通路だった。

 

There is lambswool under my naked feet.
The wool is soft and warm,
- gives off some kind of heat.

裸足の下には羊毛が敷かれている。
羊毛は柔らかくて暖かい- ある種の熱を発している


A salamander scurries into flame to be destroyed.
Imaginary creatures are trapped in birth on celluloid.

火蜥蜴(伝説の生物)は身の破滅を望んで炎の中に飛び込んでいく。
架空の生き物たちは、映画フィルムができて、やっとのことで誕生したんだ。


The fleas cling to the golden fleece,
Hoping they’ll find peace.

ノミの群れが金色のフリースにしがみつく。
ただただ平和を願っているように見える

(これは fleas:ノミと fleece:やわらかい毛の織物と韻を踏んだ遊びにかけているようです)


Each thought and gesture are caught in celluloid.
There’s no hiding in my memory.
There’s no room to avoid.

思考やしぐさはすべてフィルムの中に焼き付いている
自分の記憶の中で隠しようもないし、それを回避するだけの空きスペースもない。

 

The walls are painted in red ochre and are marked by strange insignia, some looking like a bulls-eye, others of birds and boats. further down the corridor, he can see some people all kneeling.

壁は赤黄土色に塗られていて、奇妙な文章がつけられている。

どこか牛の目や鳥や船のような。

廊下を下りていくと、何人かの人々がひざまずいているのが見えた。


Broken sighs and murmurs they struggle, in their slow motion to move towards a wooden door at the end. having seen only the inanimate bodies in the grand parade of lifeless packaging, rael rushe

ため息やつぶやきはかき消され、彼らはスローモーションで、もがいています。

最終目標の木製のドアに向かって。

盛大なのに生気の無い一連のパレード。こんな無生物の体だけを見たことがある。

 

Rael Rush

ラエル・ルーシュよ

 

Talk to them.

話しかけてみなさい。

 

The crawlers cover the floor in the red ochre corridor.
For my second sight of people, they’ve more lifeblood than before.

這いずり回る者たちが、赤い黄土色の廊下の床を覆いつくす。
彼らを見直してみると、以前よりも生命力が増している。


They’re moving in time to a heavy wooden door,
Where the needle’s eye is winking, closing in on the poor.

みんな ぶ厚い木の扉に向かって、時間通りに移動している。
その扉、針の目(穴)がまばたきしているところなのに、彼らは貧しさに向かっていく

(そこはとても通れない小さい穴なのに。そこは貧しさに向かうだけなのに)


The carpet crawlers heed their callers:
We’ve got to get in to get out
We’ve got to get in to get out
We’ve got to get in to get out.

絨毯を這う者たちは呼びかけに耳を傾ける

俺たちが出るには中に入らなければ
抜け出すためには、中に入らなければ
入らなければ外へ出られない

 

What’s going on? he cries to a muttering monk, who conceals a yawn and replies it’s a long time yet before the dawn. a sphinx-like crawler calls his name saying donK him, the monk is drunk.

「何があったんだ?」と呟く僧侶に向かって叫ぶと、あくびを隠しながら「夜明けまでにはまだまだ時間がある」と答えが返る。

スフィンクスのように這いずりまわっている奴が、(酔った坊主のことをドンクと呼んでいる)「坊主(ドンク:坊主はモンクで、酔った坊主を略してドンク)は酔っ払っているぜ」と言う。

 

each one of us is trying to reach the top of the stairs, a way out will await us there. not asking how he can move freely, our hero goes boldly through the door.
D a table loaded with food, is a spiral staircase going up into the ceiling.

誰もが階段の上にある出口を目指そうとしている。
どうやったら自由になるのかなんて尋ねずに、勇者は果敢にドアをくぐっていく

食べ物が置かれた半円(D型)のテーブル、天井に向かう螺旋階段。

 

There’s only one direction in the faces that I see
It’s upward to the ceiling, where the chamber’s said to be.

みんなが、たった一つの方向に向かっている
天井の上に向かっている。

そこに部屋があると言われているから。


Like the forest fight for sunlight, that takes root in every tree.
They are pulled up by the magnet, believing they’re free.

陽の光を求める森の戦いのように、木々は皆、根を張るのです
彼らは磁石に引っ張られているのです。自由だと信じて。


The carpet crawlers heed their callers:
We’ve got to get in to get out
We’ve got to get in to get out
We’ve got to get in to get out.

絨毯を這う者たちは呼びかけに耳を傾ける

外へ出るには中に入らなければ
抜け出すためには、中に入らなければ
でなければ俺たちは外へ出られない

 

Mild mannered supermen are held in kryptonite,
And the wise and foolish virgins giggle with their bodies glowing Bright.

いつも優しいスーパーマンクリプトナイト*に拘束されている。
賢者と愚かな処女たちは体をまぶしいほどに輝かせながらクスクスと笑う

 

Through a door a harvest feast is lit by candlelight
It’s the bottom of a staircase that spirals out of sight.

扉をくぐると、収穫の宴がろうそくの明かりで照らされている
視界からはみ出た螺旋階段の底だ。


The carpet crawlers heed their callers:
We’ve got to get in to get out
We’ve got to get in to get out
We’ve got to get in to get out.

絨毯を這う者たちは呼びかけに耳を傾ける

俺たちが出るには中に入らなければ
抜け出すためには、中に入らなければ
入らなければ外へ出られない

 

The porcelain mannikin with shattered skin fears attack.
The eager pack lift up their pitchers - they carry all they lack.

ボロボロの皮膚の陶器のマネキン(処女たち)が乱暴に扱われるのを恐れている。
濃縮ジュースのピッチャー(瓶)は持ち上がっている

--持たざる者は持たざる者のごとし

 

The liquid has congealed, which has seeped out through the crack,
And the tickler takes his tickleback.

割れ目から染み出した液体が凝固した。
人をくすぐるってことは性感帯を刺激するって話なんだ


The carpet crawlers heed their callers:
絨毯を這う者は、その呼びかけに耳を傾ける

 

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ふう。。だいぶ意訳してみたものの、韻を踏んだ言葉遊び(修辞句)があったり、突然の例え話が出てきたり、二重の意味があると思われるものがあったりと。。

 

解釈のキーのひとつとして「もがいている人たちが、螺旋階段の下から外へ出るには、いったん中に入らなくてはいけない」という歌詞。

 

それと、もうひとつのキーは、分厚い木製の扉にみんな向かっているのに、勇者や主人公のラエルは扉をくぐりぬけて次の世界へと行く事

 

青年ラエルが自分の中への旅をしている中でたどり着いた部屋で見た世界。

 

それには、ふたつのテーマが含まれているように思えます。

・前半の歌詞より

①貧しい大衆(労働者層)が、もがきながら上(富裕層or資本家)を目指している様。

*時間に合わせて、分厚い木の扉に向かっていく人たち(=工場で時間通りに働く工員)

*テーブルの食事(毎日の生活)を超えて、天井の先(富)を目指している

これらの歌詞からすると、「もがく人たち」は工場で働く労働者たちのようで。

とすれば、現状を脱却するには針の穴をくぐるほど無理な話。分厚い木の扉の向こうには管理職がいるのでしょうか。

 

※「木の根」=ヒエラルキーの最下層=労働者。それが資本家たちを支えているのであるから、社会はそうして成り立っているものだと、あきらめのような?摂理のような?現代社会の構造を示しているように思えます。

 

*扉をくぐった勇者

企業して資本家に転じた人もしくは何かで富を得た者のように思える。

 

*火に飛び込む火蜥蜴

死を覚悟している革命家のようでもある。

 

*酔った僧侶の言葉「夜明け」

新しい時代の幕開けのことで、「労働者階級の貧しい人たちはこの時代では浮かばれないから酒飲んで(あきらめて)寝てても、時がくるまでは何も変わらない」と俯瞰している(達観)言葉のように聞こえます。

 

・後半の歌詞より

「螺旋階段」をキーとするなら、これは遺伝子の象徴で、多くの精子卵子の中に入り、外へ出て自由になること=命の誕生を意味するのでは?という仮説に基づいての解釈。

精子卵子に交わる様

サビの歌詞ですが

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外へ出るには中に入らなければ
抜け出すためには、中に入らなければ
でなければ俺たちは外へ出られない

++++++++++

 

これを精子たちが自由を求めて卵子に交わりたいと解釈して掘ってみると、いろいろと見えてくることがあります。

 

*優しいスーパーマン

これは性行為を不要とする完全体の超人=スーパーマン

クリプトナイト(スーパーマンの能力が無くなってしまう放射性物質)のような弱点に支配されると、ただただやさしい人でしかならず、もちろん脱出も、命の誕生もない。

 →転じて

這いずり回っている人たちと何ら変わらない??


*ボロボロの皮膚の陶器のマネキン

光輝いていた処女たちが、性的に乱暴され、ひどい生活になってしまった様。

 

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(これには女性の性的蔑視や、扱われ方に対するピーターからのメッセージが入っていると思われる一節です。光輝くほど愛らしい少女たちが、大人になるにつれ、社会や職場、家庭内で、暴力的に扱われたり、売春を強要されたり、また何かに利用されたりと、酷い仕打ちを受けていることを歌っている部分と思われます)

 

* eager pack 

この訳が、当初まったくわからなかった。直訳すると「熱い塊り」になってしまうけれど、実は濃縮ジュースのパックのこと。

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これがピッチャー(瓶)を持ち上げているというのは、精液が男性器を勃起させている様の例えだと思います。

 

そう訳すと、次の一節は交わることの無かった精液は外でかたまり、「生を受けない」=死(無)となる。(自慰行為のことかもしれません)

 

* they carry all they lack

「持たざるものは持たざるが如し」

直訳すると「不足分はすべて、運んでいる」となってしまって日本語としては、まったくわかりにくい表現ですが、その前の文章が性的なリビドーを表現しているので、愛する相手がいるものは愛し合うけれど、「相手がいないのなら、何もない」と言ったニュアンスです。

 

慣用句で「持たざる者」と言うのは、通常「財産、富を持たざる者=労働者、財産の無い貧乏人」などと使われるのが一般的ですが、この場合はセックスの相手のいない者=自慰行為を表しているのかな?と。

 

 

そして、最後は、若いラエルを嘲笑うかのように「性を楽しむには性感帯を刺激することから始めないといかんよ」と茶化して終わる。

 

最後の歌詞のtickleback(性感帯)は、歌詞カードにはsticklback(トゲウオ)と表記されていて、おそらく類似の韻から、隠語として書かれているのだと思われます。

 

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「Countin out time」の曲の次の場面ですから、「自慰行為にふけっていたラエル少年」が、何もわからないまま女性と童貞喪失の記憶を想起し、また社会構造の貧富の2極化を、俯瞰する事と重なり、「もがいている人たちと一緒になってちゃだめだ」と歌う、財にも、恋にも、貧しい青年ラエルのコンプレックスの歌として、解釈してみました。

 

ちなみに、この曲が終わると「32の扉の部屋」と言う曲になります。

そこにいるのはおそらく「分厚い木の扉をくぐりぬけた大人たち」が集まっていて、ラエルに「あっちがいい、いやこっちの扉に行け!」など指図してきます。これまた訳すと大変w

 

・・にしても、大人になる前の青年ラエルの抱く、女性に対する憧れや、不安など複雑な思いが渦巻いている様はこのアルバムに散見します。

 

後半に「ラミア」のような特に性的な意味合いが濃い曲もあります。

 

青年ラエルが、自己の中で乖離していた(相いれない)ものが合致(一致)する話のように思えます。

 

 他の曲も時間がある時に訳してみようかと思います。

 

「幻惑のブロードウェイ」はジェネシスの作品の中でも難解と言われていますが、実は他の作品もかなり難解です。

ただ、ストーリー性がある長いお話になっているので詳細までわからなくともじゅうぶん楽しめる作品です。 

 

アルバムのストーリー全体を極端に短く要約してみれば、貧しい青年ラエルが、大都会で夜明けに倒れて、そのまま夢想にふけり、そして、自分の内側の自分と出会い、ひとつ大人になっていくロックオペラだと思います。

 

毎度ながら拙い英語力にて、誤訳、誤解釈など多々あるかもしれませんので、あくまでも「ふーん、こんな解釈している人もいるんだ」程度に読んでいただけたら幸いです。

 

あしからず。

 


Genesis - The Carpet Crawlers

 

こちらはスタイリッシュなアニメーション!


The Carpet Crawlers Illustrated

Seven Stones by Genesis

Genesisの71年のアルバム「Nursury Crime:怪奇音楽骨董箱」のB面1曲目。

[ Seven Stones ]

 この歌詞をなんとか自分なりに翻訳を試みたがこれがなんともわかりにくい。

 

で、ネットなどでいろいろと調べてみた。

 

イギリス南西部のコーンウォール地方の沿岸には7つの(実際には多数の)岩礁があるらしく、そこである船が近道をしようとして座礁してしまった事故があったらしい。

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この地域はそういう事故が昔から多く、大きな岩礁灯台を設けて事故を回避させているらしい。

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そんな事故がこの歌詞の元(背景)になっていると言う人もいるようです。

 

またイギリスで石が並ぶと言えばストーンヘンジを彷彿される方も少なくない。

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石が並んでいる様はとても意味深く感じるもの。いまだに謎も多い。

 

「7つの石」と日本語で表記しても、どこか神秘的な?何か意味深いものを表しているようなニュアンスは伝わってきます。

(結局それだけだと、何もわからないのだけれどw)

 

また、冒頭に登場するTinkerは一説によれば「麦からお酒を作った人」と言うものもあります。古い歌に出てくるそうです。(詳細未確認です、すみません)

 

Tinker :英和の辞書には「便利屋、よろず屋」なんて書かれています。

それを職人と訳すのには少し抵抗がありましたが、ピッタリな言葉が見つからなかったのでお許しを。

※仕事の定まらない人と言う意味もあるようです。「その日暮らし(流し)のなんでも修繕屋」と言った感じでしょうか。もしくは器用貧乏な便利屋さん。

 

個人的には木の葉を掃除している様から児童文学「MOMO」に登場するベッポを彷彿しました。)

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 本題に戻って

 

[ Seven Stones ]の歌詞の構成は、3人の職業人の小さなエピソードからなります。そして、その3つの話のどれもが「老人の嘆き」になっているという大人向けの紙芝居的な?曲です。

 

 では。訳してみましょう(^^)

 

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Seven Stones「7つの石」

 

I heard the old man tell his tale

老人が話してくれた

Tinker, alone within a storm,

ある嵐の日の さびしい職人の話
And losing hope he clears the leaves beneath a tree,

希望を失くして木の下の落ち葉を掃除していたら

Seven stones
Lay on the ground.

地面に七つの石が置かれていた

 

Within the seventh house a friend was found.

そして彼は、7番目に訪ねた家で友に会えた。


And the changes of no consequence will pick up the reins from nowhere.
何の脈絡も無いと思っても、いつもと違った事をすれば、

どこからともなく、導いてくれるものがあるものだ


Sailors, in peril on the sea,

険しい海を渡る船乗りたちの話。

Amongst the waves a rock looms nearer, and not yet seen.

岩礁がすぐ近くにあっても波間からは見えない
They see a gull
Flying by.

その船の横を 一羽のかもめが飛んでいく
The Captain turns the boat and he asks not why.

船長は理由も語らず船の舵を切った


And the changes of no consequence will pick up the reins from nowhere.
Nowhere.

根拠がわからないようでも、変化を伴うことをすれば、

どこからともなく、導いてくれるものがある


Despair that tires the world brings the old man laughter.

世の中の嘆き悲しみを老人は笑うばかり
The laughter of the world only grieves him,
Believe him,

世の中の笑いはただただ老人を深く悲嘆させる

だから信じなさい
The old man's guide is chance.
老人の知恵の中にある、きっかけの話を


I heard the old man tell his tale:
老人から聞いた話


Farmer, who knows not when to sow,

種蒔きの時期がわからないという農夫がいた。
Consults the old man clutching money in his hand.

片手にお金をつかんで老人に相談にきた
And with a shrug,
The old man smiled,

老人は肩をすぼめて、微笑んだ
Took the money, left the farmer wild.

お金はもらって、野生のままでいいんだよと放っておいた


And the changes of no consequence will pick up the reins from nowhere.
Nowhere.

段取りなんて考えずとも、日常を変化させれば

どこからともなく導かれていくもの。

Despair that tires the world brings the old man laughter.

世の中が疲弊し落胆している事を老人は笑うばかり
The laughter of the world only grieves him, believe him,
The old man's guide is chance.

世の中の笑い声は老人をただただ悲しませる。

だから信じなさい。

老人の知恵には、好転の”きっかけ”があると。

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まず、曲のサビに出てくる歌詞を日本語にする際にかなり悩んだ。(苦しかったw)

 

And the changes of no consequence will pick up the reins from nowhere.

直訳すると

「結果(成り行き)を伴わない変化が、どこからともなく手綱を拾いあげていくことでしょう」

これ一度や二度、歌を聞いただけでは、英語圏の人でさえ?まずまず歌詞の意味が飲み込めない。(と思います)

 

で、日本人の私が意訳(飛訳?)を無理やりさせてもらうと

「あなたが信じていることを続けていても、けっして良い事は起きない。意味(根拠)が無いと思っても、そこで変化を遂げることが何かを導いてくれるものです」

 

こんな風な意味かな?ニュアンス重視で解釈してみた。

 

そこから前後の流れにあてはめて、歌詞全体の意味を考えるとやっと輪郭がつかめてきました。

 

職人の話、船乗りの話、農夫の話と3つ並んでいるけれど

冒頭の職人は、「alone within a storm」=嵐の中ひとり寂しかった

けれど彼は、7つ並んだ石を見て、木の葉の掃除をやめて家を訪ねてまわったら友と会えた。

船乗りは、座礁に乗り上げてしまいそうだったのを、カモメを見ただけで舵を切って事故を回避できた。

困っていた農夫は、老人に相談したけれど何も言われず、その種を蒔いたら実りを得た。

 

と全部が迷った(困った)人が(ちょっとしたキッカケで)思い切って転向すれば、幸せな解決に向かうものです。という話のようです。

 

ただ、「世の中で言う『この現象こそ神の啓示だ』とか『この事象は大事なサインを表している』なんてものはバカげた迷信だ(お笑いだ)と老人は笑う。

 

※はじめの例で言えば、「7つの石」が何かを示したわけじゃなく、思い切って家を訪ねてまわったことで友達が見つかったんだよ(幸いしたんだよ)と老人は言っているのです。

 

 

迷信や古い言い伝えを信じていること、毎日同じ事をしてることより、(根拠など無くても、何かをキッカケに)思いきって日常から変化をさせれば、そこに好機は見出せるものだ。どうしてそんな事もわからないんだろう」

 

つまり、迷信ごと(言い伝え)を信じて働いている民への【嘆き】のような歌かなと。

 

たいした英語力も、見聞もない推測だらけの私の見解です。これがどこまで本作(Peter?)の意図と合致しているか?は正直わかりません。

 

この、やさしく語りかけるPeterの声に始まって、転調を交えて不安定にメロディは妖しく、美しく響き、そして最後に力強くも悲しい響きで終わる稀有な名曲だと思います。

 

この動画はすてきなアニメにしたもので、リンクさせてもらいました。


Genesis - Seven Stones (1971) legendado

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※この時期のジェネシスの曲の魅力について。

 

曲間の、ほんのわずかな小節数でフワっと明るくなったり、急に暗く不安にさせたり、はたまた、急にやさしくなったり、時に妖しくなったりと、表情の変わる様。

私は、そんなジェネシスの曲調変化に惹かれてしまいます。

 

この曲にしても、イントロのナレーション的な語りかけの導入と、3つの職業の人物に起きた出来事、そしてやさしい調べの間奏や、劇的なエンディングそして、悲しく静かに終わる様はさながら様相が劇的に変化する紙芝居を見ているようです。

 

彼らの多くの作品の中には他にも「静かできれいな風景描写から激しい曲調(驚かせて?)に転じて、そしてゆっくりと沈んでいく」など、曲の中に、ゆたかな表情の変化があります。

 

長尺のクラシックなどにはこういった描写の変化も多く見受けられますが、この曲は5分程度なので、ちょっと忙しい?と感じる人もいるでしょう。(=私の第一印象がそうでした)

 

まぁ、、ヒットチャートを賑わす、ポピュラーな曲には、あまりないですね。

 

そういった部分部分の描写、様相の変化を楽しみながら、70年代のジェネシスの曲を聞いてもらえたらうれしいな、、と、老人に近くなった私がブログに書き起こしてみました。

 

それと、、余談ですが、、最近になって、ピアノで音楽仲間に伴奏してもらって、歌ってみたら、すこぶる難しい曲でしたw


Seven Stones [ Genesis cover ]