昭和の忘れもの。

1960年生まれの青ん坊語り。

パワー・オブ・ザ・ドッグ 観了。Netflixな休日。

アカデミー賞作品賞ノミネートされていた。

このポスターから想像するような西部劇ではない。

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主な人物としては4人。

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画像の中央の二人が牧場経営している兄弟。

序盤、その弟が子連れの未亡人と結婚するところから、何かのバランスがくずれていく。

 

兄は「女なんてやりたいなら、いくらでもいる」と言い

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弟は「一人じゃないってなんて素晴らしいことなんだ」と愛をはぐくむ。

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中盤すこし冗長な感じもするが、謎めいた部分(不安?不穏?)がこちらを惹きつける。

◇このマッチョなカウボーイの兄の印象が変わる。

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はじめは若い荒くれ者たちを力ずくでまとめてきているような職人の親方みたいな感じだけれど、その印象が変わる。

弟は兄へのコンプレックスで生きてきたようだけど、それも変わる。

 

後半に向けて4人の関わり方が変わってくる。

 

最も距離が離れていた連れ子の青年と、牧場主の兄が「秘密の場所」をキッカケに急接近する。

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この連れ子の青年。

線が細くて、内向的で、どこか危ない青年。

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青年の思いが見えないまま物語は終盤へ。

大きなアクション場面も無いまま、衝撃的なラストへ。

 

劇中、兄の言動のそこかしこに出てくる「男性は女性より上(崇高なのだ)」という偏見。その偏りがどこから、何からきているのか?

 

そして、聖書に書かれているパワー・オブ・ザ・ドッグの言葉。

 

ラストにきて、冒頭を思い起こす。

「あぁ、、そういうことか。。」と2時間見た場面を振り返る。

 

日本のTVドラマのような「セリフによるおせっかいな説明」が無いので、緊張感を持って観ていないとわかりづらいかもしれない。

言い換えれば「必然性が伝わらない」かもしれない。

 

逆に映画通はディテールからとても楽しめるでしょう。

(かくいう私も見逃しているディテールがたくさんありそうです)

 

取り上げたテーマは重く、社会的でもあるけれど、4人の心情描写は必然性に満ちていて、スッと入ってきたので、こんな感想になってしまった。

 

いやほんと重い映画だった。

 

総じて絵(カメラ)がとてもよく、美しい自然と細やかな演出はひとえに監督の手腕のような気がします。好みの映画ではなかったけれど秀作。

 

社会派のドラマ?

昨今のドラマや映画(アニメ)のヒット作を見ているとどうも胸が悪くなる。

 

場面ごとの刺激がエスカレートしている。

これ昭和のオヤジだけの感想でしょうか??

 

ドラマも映画も数字を取ったもん勝ちの世界。。

 

で。

番組放映(映画の場合は劇場上映)前に番宣。もう登場人物から時代背景から前半のあらすじからていねいに図解説。。第一話って何?って感じw

 

その番宣(予告編)で一番惹きつける場面が見せ場(クライマックス?)だとしたら、本編見るとがっかりしてしまう。。

 

なにやら視聴者の脳に直接インパクトを与えたいのか?やたらと刺激の強い場面。

話の前後もわからないうちに、お茶の間に番宣ばかりが流れてくる。

 

見ているこちらも神経が麻痺してしまって、

「あぁ連続殺人ね」「あぁサイバーテロね」

「あぁ不倫なのね」「あぁいじめで自殺ね」

「あぁひどい奴が裏切るのね」「あぁ復讐に燃えるのね」

「あぁ美人が襲われちゃうのね」「あぁ人気ありドルがすごい衣裳着るのね」

「あぁ犯人にひどい過去があるのね」「あぁ・・・」

と、なんとも当たり前の出来事になってる。

 

となると、番組製作側は「もっと刺激を!普通じゃダメだ!」となってしまうもので。。なんともこのエスカレート加減がひどい。

 

大袈裟な演出。

キャラ設定やプロットに無理。。

ひどい奴はとんでもなくひどい。

 

題材も「猟奇殺人」「過激なテロリスト」「集団暴行」「暴力的な性描写」「組織犯罪と癒着」などなど、どんどん刺激的に、下品に?なっていく。

 

ただ、これらはまだいい。(ほんとは良くないけどw)

 

巧妙でいやらしいのは、現存の社会問題を取り上げ、さらに問題提起も含めていながらの、、社会派的な顔した駄作。。

 

振り込め詐欺」「反社会勢力」「短絡的な(突発的な)殺人」「家庭内暴力」「差別・排他的思想・優性思想」「SNSによる卑劣ないじめや自殺」などなど。

 

作っている側は「今、こういう事をみんなで考えてほしい」的な?

もしくは「こんな事が実際にある!」みたいな?

どこかリアルな感じ?

 

社会派的なメッセージ色を出して共感を呼んでいて、結局チープな解決策とか、もしくは問題提起のみ(ドキュメンタリーは別として)で「犯人は捕まったけれど、社会全体として考えていかないといけない・・・」みたいな終わり方。

 

 見終わって、振り返って、「で、いったいどうしたいの?」「作った側としては何を言いたいの?」とツッコミたくなるものも少なくない。

 

実際に巧妙な犯罪をドラマで微に入り細に入り描くと、「あぁ、そういうことができるのか!」とか「それならオレも実行するぜ(犯罪行為)」みたいなドラマの模倣犯を引き起こしてしまいそうで正直少し怖いのもある。

 

確かに実際に起きた事件を題材にしているのだろうけれど、ドラマが次の犯罪の在り方を拡散(奨励?)しているような要らぬ心配までしてしまう。

 

昭和の話をすると、煙たがられるのは承知の上だが、テレビのゴールデンや映画で「流血はダメ」とか、「裸はダメ」とかいろんな規制があった時代は【わかる人にはわかる】でよかった。

 

笑い話にもなっているけど、「キスシーンの次は暖炉の火が燃えている」とか、「ナイフのアップの後にはカーテン越しに人の影が倒れていく」とか、そんな映像でじゅうぶん【わかる人にはわかる】作りになっていた。

 

名画「シャイニング」のように、「怖さ」の実感は、見る側の想像力に委ね、スプラッター的な残虐な場面は映さなくても伝わってきた。

 

想像すればするほど怖くてぞっとする、、で十分でしょ?

もしくは想像(感情移入)するから泣けてくる、、で十分でしょ?

 

ただ、残念なことに、見ている側の想像力はどんどんと低下していて、直接的にその場面をこれでもか!と【えぐい場面を見せる合戦】になっちゃってる気がする。

 

もちろんすべてそうだとは言わない。

 

言わないけれど、想像力の乏しい視聴者に向けてどんどん直接的に残虐な、お下劣な場面が増えてしまってきているのは確かで、、いやぁ何ともはや。。

 

まぁ「刺激の少ないドラマ?そんなん誰も見ないよ」と言うなかれ。

 

しっかりとていねいに作って、視聴者の中にも想像力が残っている人をターゲットにしたものを、どこかで信じて作り続けてほしい。。

 

良質な作品は大げさな駄作に勝てないのかなぁ。。

 

 

「2人のローマ教皇」を見て。

休日に見たNetflixの映画。2人のローマ教皇。見ごたえ十分な大人の映画でした。

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話を簡単に書くと、実話にもとづいたフィクションで。

2005年に教皇ヨハネ・パウロ2世が死去。そしてドイツのベネディクト16世(ポスター写真左)が選出される。

その教皇選出(コンクラーヴェ)の模様からスタート。

何せ、教皇選出についてなど、まってくもって知らなかった私。冒頭から入り込みました。

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※大好きなアンソニーホプキンスが好演!

 

その後、数年経って、マスコミによる「幼児への性的虐待」の発覚もあり、ベネディクト16世には大変な出来事が続く。

 

生存したまま退位(700年ぶり!)を決めたベネディクト16世と次の教皇となるベルゴリオとのやりとりがペイソスあふれた形でていねいに描かれている。

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※アルゼンチンに住むベルゴリオは明るいラテン系?(ジョナサン・プライス

 

そして2013年に南米から初の教皇が誕生し、ベネディクト16世は生存したまま退き「名誉教皇」となる。

 

この2人がとても対照的で会話がかみ合わないところがとても面白い。(わざと話をそらすところも意図的で惹かれる)

・ドイツ出身とアルゼンチン出身

カソリック系とイエズス会

・「教義の番犬」と言われるほどの権威保守派と革新的な考えのもとの庶民派

・「人嫌い」と「人大好き」

まぁ、そこここに2人の違いが描かれていて、まずまず話はかみあうこともない。

 

そんな2人の会話が肝なんですが、立場違えど、いろんな苦悩があるわけでして。

 

何より、、2人の一番の共通点として「(教皇には)懺悔する相手がいない」と言うこと。

 

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人が人を赦すということ。

人が人の気持ちに救いをもたらすということ。

この意味をもっとも深く知る教皇が、自分の苦悩(罪)について語る相手がいない。

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※こちらの画像は実在の教皇本人。

 

これは、もちろんローマ教皇だけでなく、地位が上がるにつれて孤独になっていく様に通じます。

 

そんな2人を描いているとても人間味あふれるいい映画だと思いました。

 

何より、主義も趣味もまったく違う2人のやりとりがけっして深刻ではなくむしろユーモラスに描かれていて、苦悩に関する話もすんなりと(しみじみ)心に入ってきました。

 

ラストもいい(^ ^)

 

事実と異なる部分も多々あるようですが、ひとつの映画としてとても秀逸でした。

 

 

さすが2019年のハリウッド脚本賞をもらっただけの作品です。

2020年のアカデミー賞では

主演男優賞:ジョナサン・プライス

助演男優賞:アンソニー・ホプキンス

脚色賞:アンソニー・マクカーテン

にノミネートされているそうです(wikiより)

 

うーん、、しみるなぁ。。