70年代になると貧しい家庭の主人公がスポーツでがんばって勝っていく姿は、少年たちの生活が豊かになっていくにしたがって指示されなくなってくる。
「ごく普通の少年の、ごく普通の野球漫画」
その中に友情や野球に対する情熱があれば、そこにはドラマがあって、普通の少年たちの心をひきつけられる。というもの。
魔球もなければ、瞳の中に炎もない。野球漫画の中の夏目漱石みたいな名作??
それが「キャプテン」
キャプテンは野球少年そのものを漫画にした。練習に来なくなった部員を励ましに家に行って説得する場面なんて、ちょっとスポ根ものではありえない場面ではないか?
「ふつう」だけど、みんながんばる。
「速い球が打てないなら、バットを短く持て」そんなアドバイスで打てるようになる。
これこそ野球の原点。ライバルは野球エリート校。これもまたふつうw相手の研究をして、試合に活かして勝つ。これも普通っちゃふつうw
でもこの「ふつう」がいい。終盤、甲子園に行くレベルの学校と対戦してフツウに負ける。と言うか、あまりに現実的にあっさり負ける。それでもがんばった仲間とはかけがえのない友情が芽生える。後日談のような「プレイボール」も面白いが、やっぱりキャプテンがいい。それも谷口キャプテンがいい。大人になって読み返すと泣けてくるもの(恥)
ハードロックのリズムの中にシンセサイザーとエレキギターのすごいバトルがあるのもいいけど、アコースティックギターの弾き語りもまたいい。と言ったところか。
もちろん昭和の野球漫画の名作中の名作なのでファンの方がもしこのブログを読んだなら、「何あたりまえのこと書いてんだよ」と思われるでしょう。
でも、、相手の気持ちを考える場面とか、思いやる場面とか、少なからず出てくる。そのあったかさ。温度がいい。
そして、、何より読後感がいい。by青ん坊
※ちばあきお氏は巨匠ちばてつやの弟さんで、40代前半の若さで自殺により他界されました。
そして、時代が変わり、日本の生活文化(所得)水準があがって「普通=貧しい家庭」ではなくなってくる。
「貧乏をウリにするってダサいよね?」みたいな。もっと普通の生活の中に野球があって、それはそれで本気でがんばるって話に変わっていく。
タッチ
80年代になって学園ドラマになった野球部少年の話は絵がさわやかで、スポ根の時代の終わりを告げる。
スポーツの世界でも「しごき=体罰」のような図式が成り立って、科学的な筋力トレーニング+栄養摂取のための食事など。結果として根性論を旗にかかげる監督は減っていく。鬼コーチのスパルタ(特訓)だけでは決して技術を向上させてはいけないというのが浸透していったこともある。
楽しい学園生活(恋愛)があって、その中でスポーツに真剣に取り組む姿はとてもさわやかで、かっこいい。その中に心の機微も描かれていて読者はすんなりとあだち充氏の世界に入っていけた。
これも読後感がいい。
こういう心の機微を描く普通の少年野球漫画とは別に、ほぼ時代は同じ70~80年代に
トンデモな?破天荒な?野球漫画も登場する。