昭和の忘れもの。

1960年生まれの青ん坊語り。

小さいおうち 感想(ネタバレ少し)

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小さいおうち

昭和10年代の若き頃の女中のタツさんを黒木華、そして晩年のタツさんを賠償千恵子がそれぞれ演じた。

現代のタツさんが昔のことを振り返ってノートに自叙伝を書くことでストーリーが進む。
そのタツさんの心の機微が場面を追うごとにとてもよく描かれていた。
特にクライマックスの場面でのタツさんの心の中での複雑な感情が強く観る側に迫る。
さらにその後のラストの恭一の言葉は衝撃的。
静かに語られる会話の中にタツさんがノートに書けなかった部分がわかった時には思わず涙がこぼれた。
日本を代表する山田洋次監督の代表作と言ってもいいと思う。

もちろん松たか子黒木華の会心の演技。

名脇役もすばらしい。「あーこういう人昔いたよなー」と自然に思えてきてドラマに厚みを増す。

個人的なことを書くと、私の母は大正13年生まれで、10代の途中から女中奉公に出て働いていた。
その頃の話を80を過ぎた母は思い出し思い出し、うちのツマさんに話していた。(私は直接母から聞いていなかった話)
「初めて行ったところ(奉公先)はとても厳しい家だったんだけど、二番目に行ったところの奥様がね、とても私を可愛がってくれてね。
料理でしょ、お裁縫でしょ、簡単な帳簿のつけ方とかね。いろんなことを教えてくれたのよ。それがとてもうれしかった」

そんな自分の母の姿がいつの間にかタツさんと同化して、よりリアルに映画の中へ入っていった。

もしかしたら、母も「誰にも言えない小さな罪」を抱えてあの世に行ったのかもしれない、、なんてことまで考えてしまった。

 

いい映画でした。


その昔、私がまだ学生の頃(80年頃?)
"フランスではハリウッド映画がヒットしない理由"をフランス人に尋ねたことがあって
「ハリウッドの映画はどれだけすごい映像を撮るか?どれだけすごいヒーローが活躍するか?でしょ?
フランス映画は爆破シーンもなければ、ヒーローも出てこないけど、人の気持ちを描くのよ。
男の気持ち、女の気持ち。親の気持ち、子の気持ち、友達の気持ち、そういうのを描くの。だから面白いの。」と教えてくれた。

この映画がヨーロッパで賞賛されたのがよくわかる。

 

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