昭和の忘れもの。

1960年生まれの青ん坊語り。

NHK『超入門!落語 THE MOVIE』はダメだ。

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古典落語をドラマ仕立てにする番組がお正月のこの時期にまとめて再放送されている。

『超入門!落語 THE MOVIE』

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ツマさんと何気なく深夜テレビを見ていて、二人して同じことを思った。

 

「こんな番組を作ったらダメだ」

 

私は古典落語は有名なものしか知らない。

しかしこれはダメだ。

 

さらに言えば、正直なところ寄席には1度しか行ったことがない。

しかしこれはダメだ。

 

今売れている役者を使うことにさしたる不満があるわけではない。

しかしこれはダメだ。

 

噺家の語りに合わせて役者たちが演じる「当てぶり」という手法(演出)は、ある意味斬新だ。

しかしこれはダメだ。

 

なぜなら

落語は、お客さんの脳内に映像を作り出す話芸なんだ。

その映像を誰かが作っちゃダメだ。

 

噺家は登場する何人もの人物になり、そしてナレーターにもなる。

その仕草ひとつで、噺家がなんとも色っぽい花魁になり、

その表情ひとつで、噺家がなんともとぼけた八っつあん、熊さん、和尚になり、

その声色ひとつで、愛情深い女房になる。

ナレーションはテレパシーで脳に直接状況を説明してくれる最高の黒子になる。

 

その時のお客の脳内スクリーンには、その人にとっての最高の花魁最高に間抜けな八っつあん熊さん、最高に見栄っ張りで知ったかぶりの和尚が映し出されているんです。それを「話芸」もしくは「名人芸」って言うんですよね?

 

今は想像力の無い人が増えている。

だから、こういう試みはある程度の功を奏すのだろう。

だけど、落語じゃない。

 

「あなたたちは想像力が無いから映像化しました」と制作側から言われているような印象を受けました。

 

分かりやすくすればいいってもんじゃない!

 

それでも、この番組を見て、初めて「落語を面白い」と感じてくれたなら寄席に来てもらうキッカケになるかもしれない。。。とでも思ったのでしょうか?

 

NHKさま。

今までのテレビの歴史を振り返ってくださいませ。

 

対象となる視聴者の感受性レベルを下げて、よかったことがありますか?

その場、その時だけの数字を取ることはできるかもしれません。けれども視聴者はさらに想像力を無くし、感受性レベルを下げてしまったんでしょう?それを一番憂いてるのがNHKであってほしいのに。

 

そんな企画を国営放送が先陣切ってやる意味があるんですか?

 

想像力の無い視聴者が、さらに想像力の無い人になっていく。

 

・ドラマの中でキャラクターに状況を説明させる長セリフ。

・芸人のセリフにかぶせるテロップと笑い声。

・感動的なシーンの手前から流れてくる悲しいメロディ。

・陳腐な話を「深いですねぇ」と何人もが感心するバラエティ。

 

どんどん低レベル化して数字をとってる番組・・・枚挙にいとまがありませんぜ。

 

あぁ。。ひどい。。

本物のラーメンみたいな味のカップ麺を食べて育った人が作っているのかな??

 

ちなみに出演されている噺家さんをけなしているのではありません。むしろ逆です。だからこそ勿体無い。

 

(こんなブログを書きながら、さっきも聞こえてきた噺家さんの落語。。画面見なくとも面白いです)