ヒトの器官とオザケンの話
ネコの目を見るとよくわかるけれど、明るい時は瞳が縦に細くなって、暗い時には丸く大きく開く。
瞳孔が開くとか閉じると言う話。
これは光センサーが働いている。カメラにもあるし、もちろんヒトにもある。
耳にもある。
音楽、こと録音をやっていると「入力ゲイン」というのがあって、この光量の調整のように音量の入力値を上げ下げする。
これもちゃんとヒトにあって、ロック系のライブ会場などの大きな音が鳴り続ける場所に行くと耳は入力ゲインを下げて聞くようになる。だからロックのライブの最中に寝ちゃう人もいる。
「よくこんなうるさい場所で寝られるね」と言うけれど、「あぁ、耳を麻痺させて聞いてて、疲れがフッとやってきたのね」って話。実際うるさいところにいると疲れますw
ひそひそ話がよく聞こえてしまうのは、この逆で、瞳孔開くのと同様に耳のセンサーを敏感にして小さな声を聞き分けようとする。
この能力はすごいものがある。地獄耳ではなくて、誰もが持ってるセンサー調整なんだよね。
渋谷のスクランブル交差点で子どもが「ママー!ママー!」と叫ぶと、子どもを捜しているママにはちゃんと聞こえるという類いの話。
つまり、一定の周波数の声(自分の子どもの声あたり)を感知しようと耳が部分的に入力ゲインをあげている状態だ。
※画像は周波数ごとに強弱をつけられるイコライザーの簡易版
鼻(嗅覚)も同じ。くさい場所にいると「鼻がバカになる」なんて言われるように、一時的に臭いに鈍感になる。逆にある一定の条件が揃うと鼻が敏感になる。嗅ぎ分ける能力もちゃんと備わってる。
実は私は住宅施工の会社に勤めているサラリーマンだけど、職人さんの使う作業車に乗ることがある。
その時の塗料(アルコール系)の臭いはひどい。そんな時に車の窓を開けてタバコを吸う。すると、タバコの臭いが直接鼻に入ってきて、鼻はすぐにバカになる。
結果、アルコール臭は感じなくなり、不快な状態から開放される。なんてことは昭和じゃ当たり前だったんだよね。だから職人たちはみんなタバコを吸うってわけじゃないかもしれないけど、喫煙者率は高い。
おそらく炭鉱夫さんたちも、トンネルの奥に行くまでに鼻はバカなっただろうし、休憩となれば、煙たくてもタバコ吸ってたと思う。(タバコの香りの方がよっぽど臭くない)
まぁ今の禁煙ブームでは考えられないだろうし、いい悪いって話は別として。
家、部屋の匂いってのも、自分ではわからなくなることがある。それは部屋のにおいのその部分だけ麻痺させているのかもしれない。
ペットを飼っている人が、そのペット臭に関しては鈍感になるってこともよくある話。
部屋の住人は、だからと言って、他の匂いがわからなくなってるわけじゃない。これも匂いのイコライザー機能?だろう。
味覚の話だと、最近の「激辛料理」。
実は辛さに関しては自分の体験エピソードがひとつある。
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20年ほど前になろうか。
横浜駅から車で5分ほどのこじゃれた焼肉屋に行った時のこと。
ほどよく焼けた上質のハラミと「青唐辛子」を丸1個いっしょにサンチュで巻いて食べた。
辛いとは聞いていたけど驚いた。水を飲んでも、サンチュを食べても口の中がとにかく辛かった。熱いというのが近い。
2,3分ほど経って、やっとおさまってきて、次にキムチを食べた。
そうしたら、キムチの辛さがまったく感じない。逆に甘さ(漬ける時にまぜこんだ砂糖など)がよーくわかって、これまた驚いた。
キムチにはすごくたくさん砂糖(ショ糖?)が使われているのがわかった。
味がわからなくなったという舌バカになったのではなく、辛さだけ感じない舌で焼肉を食べた。
そこはとてもいいお店でその後も数回訪れた。アレ以来、青唐辛子を丸で食べることはしなかったけどw
そんな機能も舌にはあるんだと驚いた経験だった。
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そう考えると、補聴器をつけると、さらに耳が遠くなると言うのもなんとなく納得できる。
音の入力ゲインがあがらないところで、補聴器をつけるわけだから、補聴器をはずせばもっと聞こえなくなるのは当たり前の機能。
それが慢性化したことに気づくと「前より聞こえなくなった」ということになる。
大きなステージでイヤモニつけてやってると耳が壊れちゃうミュージシャンも同じ理屈。
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この舌にあるセンサーの入力ゲインを下げてる人は鈍感ってこと。
だから激辛食べても「こんなのちっとも辛くない」と言う。
いっしょに食事をしている人が激辛を食べながら、ちょっと自慢げに「なんだよ、全然辛くないじゃん」なんて言ってるのを聞くと(あー、この人舌を鈍くして食べてるんだなぁ)って。
うーん、なんだかなぁ~。。
最近、外食すると「うわー、、しょっぱくて食べられない!」と思う料理が多いんだけど濃い味好きな人は慢性麻痺状態になっているのか、その手のお店はけっこう繁盛店だったりする。
こんな塩加減をフツウに食べてたら、腎臓こわすんじゃないか?と他人様の身体ながら心配になるほど。
※大好きなレバにら炒め。しょっぱくて食べられないお店もある。
私がとんこつラーメンを食べなくなったのは油臭さよりも、この「しょっぱさ」がダメになったから。
カップ麺もお湯の量の目安の線までしか入れないと、かなりしょっぱい。。
これじゃ一億総高血圧?一億総透析患者?になりかねない。。
慢性麻痺した「濃い味好き」の人が「薄味」の料理を食べると「なんだ?これ味が無い」となってしまう。これが一番困るというか、こわいところ。特に居酒屋などは飲み物をたくさん飲んで売り上げたいからしょっぱくするのが正解だと思っている。
市販の野菜そのものの味が、薄くなって(無くなって)きてもドレッシングやマヨネーズをやたらかけて食べているから、、わからないんだよね。
有機栽培の完熟トマトとか、とうもろこしなんて、何もつけなくてもおいしい。
安い外食で濃い味に慣れてしまってるなら、そういうもので舌をリセットしたほうがいいかな?と思う。
薄味は何度かトライすれば、間違いなく慣れる。素材の味を楽しむなら、濃く味付けされていない方がいい。もちろん体への負担も軽いはず。。
と、ここまで書いて。
待てよ?これは実は脳がいろいろ調整してるんでは?と仮定してみると。。
以前に「行間」について書いたけれど、実は文章について、もしくは会話に対しても同じなんじゃないか?と思う。
つまり「はっきり言われないと意図がわからない」「想像力が働かない」のは読み取りセンサーが麻痺した状態なんじゃないか?と。
先日のNHKのドラマ「この声を君に」の一場面を思い出した。
「空想しながら読む」という言葉に主人公が「できない」と言っていたのだが、子どものために本を読む時に空にくじらの雲が出てくる場面。
子どもといっしょにくじらの雲に乗って海や山に行く場面。よかったなー。
やればヒトの脳はちゃんと働いてくれる!
そう考えると若い人で、テレビやゲームばっかりやってる人でもチャップリンの映画を観ると読み取りセンサーが目覚めてちゃんと理解するようになる。
ただ、刺激の強いのを一旦求め始めると、その傾向はどんどん強くなる。
当たり前の話。だって1の辛さで足りるのに3の刺激が入ってきたら
「お?ちょっと辛いね。でもおいしいね。うーんでも辛いなぁ・・」で終わる。
次は脳が覚えているから、食べる前に記憶からセンサーのデフォルト値を上げておく。
そうするといつのまにか3の刺激を1くらいに感じるように、入力センサーは麻痺。
結果5とか7の刺激がないと「お!」と思わなくなる。この「お!」が欲しい人はさらに強い刺激を求めていく。
だから辛さ10倍とか30倍とかの料理を注文する人は、刺激に対して麻痺してるだけの
味覚バカになってるって話。(そして体に悪い)
どこかでちゃんと1にリセットしておかないと体に悪いくらいの強い刺激がないと満足できない人になってしまう。(中毒性もあるかも)
で。
ずっと音楽活動をせずにメディアに出ずにいた彼に
「メディアから消えていた間はどんなことをしていたんですか?」
と言う質問をMCで取り上げてた。
彼いわく、SNSに乗せる写真は現実の3割増で見せてる。だから実物を見ると、ちょっとがっかりする。なんてことを言ってた。
さぁ話しましょう!と、本人が過去の話をすると、その話も3割増になってしまう。
それを聞く側は「話半分」で聞くものになる。
要するに、ここで話したところで、なんだか「いい話」を水増しして、語るミュージシャンになっちゃって、そういうのは柄じゃないってことなんでしょう。
テレ屋で、ちょっと斜めから見る彼らしい日常の切り取り方だなぁ・・って思った。
ちょっとしゃれてるし。(彼はいつもちょっとしゃれてる)
彼の歌も朗読した詩も、刺激は少ないけれど中身がある。
英語をしゃべるには「間違える力」が必要なんです!
なんてとってもよかった。
言うなれば、美味しいだしの利いた上品な薄味の料理を食べたようだった。
うん。以前よりよくなった。
※すっごく高そうなボロボロの(ヘビーレリック仕様かヴィンテージもの)ストラト弾いてたなぁ。。