昭和の忘れもの。

1960年生まれの青ん坊語り。

ひとがた流し 北村薫著 読了。

スポンサードリンク

FBの友人F氏の高評価に押されて手に取った本を読んだ。

高評価の通り、あまりによかったので、久しぶりの読書レビュー。

f:id:aonbo:20191021105728j:plain

 

ひとがた流し北村薫

 

学生時代からの女友達3人組。

〈千波〉は猫のギンジローと住んでいる現役の女性アナウンサー。

〈牧子さん〉は娘のさきちゃんと二人で暮らす女流作家。

〈美々ちゃん〉は再婚した写真家の夫の類と娘の玲との3人暮らし。

 

序盤はそれぞれのキャラクターの輪郭を示す、やんわりとしたエピソードで始まる。

 

新聞の連載小説らしい、言わば朝ドラのような始まり方。

 

中盤、道路標識の写真を撮り集めた娘に話す、父親の類のセリフに涙腺崩壊。

 

この本を通勤バスの中で読んでいた私。急に涙腺が崩壊して恥ずかしかった。あはは(^^)

f:id:aonbo:20191021110751j:plain

後半、謎の人物?ことスズキさんの存在が明らかになってくると話のテンポは一気に駆け上がる。

 

何度となく涙を抑えきれずに、ラストまで一気に読ませていただいた。

 

友への思い、伴侶への思い、親子の在り方など、日常の中の温かい愛の話に共感してしまう。

(と、、うーん、私のような表現力に乏しい読者が感想を書くとなんとも稚拙で申し訳無いがw)

 

何より、とてもきれいな文章で綴られていてまっすぐに情感が入ってくる。

各キャラクターの自然なセリフから、著者の広くて深い造詣が伝わってきて、、何度も涙があふれてしまった。

 

SF小説を読む時に、どこまで飛びぬけた未来像にリアリティがあるのか?

犯罪や事件を扱ったサスペンスを読む時に、どれだけ犯人が冷徹で切れ者なのか?

 

仮に、そんな物差しをこの日常のドラマにあててみたとすると、どれだけ温かい愛と思いやりや情が登場人物にあるか?

 

と、、そんな観点からも間違いなく満点の出来栄えでした。

 

それと、書かれている視点が変わることによって、それぞれのキャラに感情移入できるのは、まさしく著者の力だと思いました。

 

クライマックスに向けて【ずっと良い子】でがんばってきた主人公が、最愛の人を前にひどい言葉を言ってしまった、言えた、というエピソードが何より1番泣けた。

 

まったく個人的な印象ですが、、(基準とか、根拠とか無いですが)夏目漱石山田太一の中間くらいの人間臭い?すてきな小説でした。

 

うん。しみた。

 

あー、、また北村薫の本読もうっと!

 

ひとがた流し (新潮文庫)

ひとがた流し (新潮文庫)