MMTの話に出てきた「モモ」読了。
今週のお題「資本の成長」
貨幣価値が変わると資本も変わる。資本家、資本主義、みな姿を変えていく。
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モモを知ったのは70年代。出版されて間もないころ。
書店で見かけたものの、あまり興味がわかずに読むことがなかった。
最近になって、現代貨幣理論(MMT)の話に興味を持って、いろいろと辿っていたら、何人かの人がモモに言及していた。
ミヒャエル・エンデのモモと聞くと、今は亡き親友のT氏の愛読書だったのをよく覚えている。T氏にモモの話を聞いたら「始めがいいんだよ。」と一言だけ。
それが当時、妙に気になっていたことまで思い出した。
そんなことが引き金になって、最近図書館でモモを借りて読んだ。
物語はモモという少女の紹介から始まる。古い円形劇場の廃墟に住み着いたモモ。
この円形劇場の廃墟。「大衆演劇の場」=アートやカルチャーの発信地が廃墟となってしまった時代と言う設定なのか?そこに住むと言うところがニクイぜ!ミヒャエル!
モモの不思議な力は「聞くこと」。いろんな人が集まってきては、モモに話をする。
モモと話しているうちに、話し手の頭の中が整理されていく様がいい。
モモといっしょに遊ぶうちに、子どもたちの想像力がどんどんふくらんでいく。その様がいい。
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また、物語の中には、いろんな暗喩が登場する。
・二人の大人が言い争っている話はまるで現代の日本と隣国のよう。(作者としてはイギリスとフランスの仲の悪さの例え?)
・誰かが作った玩具は遊び方がひとつに決まっている。これなんて、まさにプログラミングされたゲームのよう。
・お金儲けに役立つことしか教えてくれない「こどもたちの家」:学校?
・立ち並ぶ同じ形の家:規格(型)通りに作られた住宅団地?マンション?
さらに中盤、レストランが効率化を強いられてファーストフード店になる。その前にお店に長居する老人が追い出されてしまうのは読んでて痛い。。
モモの友達のジジという青年はマスコミでもてはやされる芸能人(スター)の象徴でしょうか?
そんな暗喩がたくさんある。とりわけ、時間泥棒の1人がモモと対峙した時の「完全な人形」の話はこわかった。作者エンデが杞憂する現代人の求める「無限の消費による幸せ像」のようで。
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後半のクライマックスに向けて「時をつかさどる神」が登場。そこで見た時を刻む振り子の様子が秀逸。
ひと振りごとに、違う花が咲き、その花が散ることとして表されている。このあたりは人の寿命をロウソクに例えるのとは違ってカラフルですね。
MMTの話としては、この物語に出てくる「時間」は現代社会の中での「貨幣」を意味するとか言われています。もしくは解説している人の中には「生活そのもの」を意味するとか、文中の神様(作者)が言う「心が感じるもの」などなど、解釈はいくつかあります。
でも、読んでいたら、それはそのまま時間でいいんじゃないかな?と私は思いました。
時間=かけがえのないひととき。それを大事にしたいorしてほしい気持ちが
書かれたお話でいいんじゃないかなと。
※「大事にしたい」は労働者向き、「大事にさせてほしい」は資本家向きと言う意味合いの物語ではありますが。。
21世紀に生きている私たちからすると「仕事の効率化=時間の無駄を省くこと」は決して悪いことではない。けれど、無駄を省いて空いた時間は人生の楽しみに使いたいものだと言うのが概ねな感想ですね。
過労死やブラック企業なんて言葉は70年代には聞かなかった言葉。
だけど労働基準法も整っていない時代に過酷な労働環境で働かされていたのはドイツに限ったことではなかったのでしょう。そんな70年代の延長上に21世紀の日本(世界)はある。そして、その世界は、けっして良い世界じゃないと言うのを書かれているような気がしました。
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そういう意味合いとしてはチャップリンの「モダンタイムス」にも通じるシニカルな要素もありますね。
50年代、60年代、70年代と資本が成長して、21世紀になったらなんだか一部は成長、発展を遂げているのに、片方では衰退も見られて、実際のところ人は成長していないのに気付く。
モモの出版された70年代から50年ほど経った現代。やっぱり灰色の男たちはたくさんいます。
ただ、エンデの話より、もっとこわいのは、現代の灰色の男たちは下着だけが灰色で、みんなが着るようなおしゃれなスーツを着ていたり、色とりどりのカジュアルな服装をしていたりと、まったく見分けがつかなくなってることじゃないかなと。
もしくは今の子どもたちのポケットには、灰色の絵の具が最初から入っていると言うことでしょうか。。
- 作者: ミヒャエル・エンデ,大島かおり
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2005/06/16
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