昭和の忘れもの。

1960年生まれの青ん坊語り。

「アンと言う名の少女」1~3

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毎週日曜夜にNHKでやっている「アンと言う名の少女」を第1回から見たら、とてもていねいに「赤毛のアン」が描かれていて、久しぶりにはまった。

 

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この作品をNetflixで全部見ることができると知り、さっそく続きを。

で。

これがシーズン1~3まであって、全部見るのにはかなりのボリューム。

週末だけ見るようにして、1度に3話くらいのペースで観た。

 

(ここから先はネタばれにもなるので、今見ている最中の人はご遠慮されるか、もしくはご理解の上で読んでください)

 

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小学校の学級文庫にあった「赤毛のアン」はずいぶんとカットされた児童文学でしたが、今回のドラマは世代を問わず楽しめる社会派のヒューマンドラマに仕上がっていました。

 

とても雑な言い方をさせてもらうなら

「つらいことを全身で受け止めて、まっすぐ立ち向かう少女の奮戦記」であり

「前向きにがんばるアンのまわりにいるすてきな応援団の話」でもあります。

 

そのすてきな応援団の第一人者はアンを孤児院から引き取った養父母(この二人は夫婦でなく兄妹ですが)のふたり。

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※養父母は「孤児院から男の子を紹介してほしい」と言ったのに、女の子が来てしまったから返しに行く?

 

冒頭のシーンで養父がつぶやく「私たちが変わる」と言うセリフ。深いです。

 

言うなれば、アンが孤児院時代から新しい生活になって、文字通り「人生が変わる」こと以上にアンのまわりの人たちが心動かされて変わっていく物語でもあります。

 

何より、アンの養母のマリラが、養母から「母」に変わっていく様が何よりすばらしい。

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(演じられた女優さんジェラルディン・ジェームズハイトさんにはとりわけ大きな拍手を送りたいです!)

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話の中で取り上げるテーマは100年以上前の原作とは思えない。まさに現代にも通じるものばかりです。

 

・社会の中の格差・偏見

・人種差別や民族差別

・広い意味での教育問題、国家政策

ジェンダー

・性差別、性暴力

・旧態然とした悪しき慣習

その他、依存症や、詐欺などの話もあり、現代社会でも抱えている多くの社会問題が盛り込まれています。

 

劇中、多くの事件、多くの問題が彼女や彼女のまわりに起こります。

それらの問題が解決に至るプロセスにしても、どれもが現代に通ずるものばかりです。そしてそして、そういう問題に立ち向かうアンを見るたびに好きになってしまいます。

 

もちろんアンだって、ひとりの少女(人)ですから、傷つき、悲しみ、時に涙を流し、時に癇癪を起したり、落ち込んだりもします。

それでも、たくさん泣いて、たくさん癇癪を起こした後の前向きに進んでいく姿が素晴らしい。

 

とは言っても、この話は勧善懲悪のような単純なものではありません。

 

悪しき慣習から圧力をかけてくる人たちだって、先行き心配で、不安で、やっとこさ見つけた考え方を次世代の子たちに伝えたい気持ちがあります。

そんな現代の日常のどこにでもある「おせっかいな暴力」についても細やかに描かれています。

 

それとは別に、学校や、町で直接的に暴力をふるう人、犯罪を犯す人も登場しますが、彼らがアンと関わっていくことで変わっていく心の機微も描かれています。

 

全編を通して写し出される映像がまたすばらしい。

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プリンスエドワード島灯台

 

 

大草原を馬に乗って駆ける姿は神々しいほどです。

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そして製作。

 

原作に描かれている内面の動きまでしっかりと再現したいという、制作側の思い入れがよーくわかるとっても素敵なドラマに仕上がっていました。

 

監督(何人かいるのかな?)をはじめスタッフ、脚本、演出、カメラワーク、音楽、美術、もちろん役者さんたちの名演とどれを取ってもすばらしかったです!

 

※観終わってから考えると作家のモンゴメリーが「赤毛」のコンプレックスを強く抱く女性を主人公にした事にも至極納得です。

 

「はつかねずみと人間」(主に貧富の格差)とか「Rootsクンタキンテ」(主に民族差別)とかには、これだけ多様な社会問題まではなかったと。

とりわけ「アンと言う名の少女」は世界観が明るいのでこのような話とは明らかに一線を画していますが。。

 

ただ、このドラマ、、カナダでのシーズン3の最終話 放映直後に「打ち切り」となったそうです。

wikiによると「CBC社長のキャサリン・テイトは、長い目でカナダの産業の害になるNetflixとの共同製作はやめると発言していた」とあります。

 

シーズン3で起きた未解決の大きな問題を残したまま終わってしまったのが非常に残念です。

Netflix以外での共同製作、もしくはカナダのCBCの単独製作で続行するのは難しいのでしょうか。。難しそうですね。。

 

この作品、うちのツマさんも大好きで、気が付いたら「日本初の全文和訳:赤毛のアン」を購入してましたので、(あの美しい風景とあの個性豊かな登場人物を思い浮かべながら)私も読もうと思います。

 

赤毛のアン (文春文庫)

赤毛のアン (文春文庫)

 

 

最後に余談。

孤児院の少女のシンデレラストーリー的な「あしながおじさん」と比べちゃぁいけません。良し悪しは別として。