「今年の桜は何か汚いな。うん、なんて言うか、きれいじゃない。」
と職場の先輩が言った。
意味合いとしては満開になのに、どこか葉桜のようだと。
けれど、私にはその言葉が別の意味に聞こえていた。
彼の中で、桜の開花を「心待ちにしていない」感じがした。
お酒の好きな先輩は、盆暮れ正月と同じくらいに毎年の花見が楽しみなのに、今年は待っていない。
ささやかな行事(宴会)も、ないとあきらめていた。
桜。今年も先輩は花見に行かない。
それでも昨年はまだよかった。
どこかで「みんなで自粛している(がんばってる)感」があって。
「あぁ桜きれいだな、この時期がまんすれば美味しい酒が飲めるんだから、みんなでガマンだ。。」と横目で見ながら近くの名所を通り過ぎた。
ところが今年の先輩の言葉はちがった。
「桜、、うん、なんか、やっぱりそんなにきれいじゃない」
好きだった異性とすれ違ったのに、ときめかなくなったような響きだった。