昭和の忘れもの。

1960年生まれの青ん坊語り。

ドラマ「カルテット」料理とセリフと。

今週のお題「うるう年」

2/29に何を思ったか?さして見当たらず、この週末は2017年のテレビドラマ「カルテット」(1話~10話)を一気に観た。

まぁ4年に1度のうるう日にボーっとドラマを見るのもいいかと。

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このドラマほんとにていねいに作られている。

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脚本、コマ割り、演出、時間の運び、伏線などなど。。

 

登場する役者4人も、演技が上手で安心して入りこめる。

 

そして、料理。

1話の唐揚げにまつわる会話から始まって毎回美味しそうな料理が色を添える。

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昭和なおやじとしては、家森さん(高橋一生)のこだわりの話はどことなく伊丹十三を彷彿させた。

(伊丹氏が料理について話す時は、うんちくを語るので、会話にはならないけれど)

 

冒頭に出てきた食卓の唐揚げの話から、夫婦のスレ違いを唐揚げが象徴するエピソードになり、ドラマ最後に唐揚げで終わるところなど、かなり凝った脚本。

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その夫婦のスレ違いの話はお互いの視点からの再生場面となっていて、演出もすばらしかった。そして、私の過去の離婚の実体験と、どこか重なる部分もあって、、沁みたなぁ。

 

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(丼ぶりにも個性が)

とまれ、ドラマのメインテーマは、事件が起きるたびに深まる4人の関係性にある。

 

男2人、女2人の4人。弦楽4重奏を奏でながら、仲間についてきたウソや、かくしていた事を露呈することで結びつきが深まっていく。

成就しない淡い恋があったり、何かのズレがわかっている中で求めていたり。

 

通ってきた道のりはそれぞれでも、1度はプロの演奏家を目指してきた4人は、職業音楽家になれず、かといって音楽を趣味で終わらせることもできずに、4人それぞれに「位置」が定まらない。

 

ドラマの中で彼らはショッピングモールで演奏をするところから始まる。

次にレストランで毎週末弾く仕事を手にする。

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さらに、プロの演奏家になるチャンスをもらう。

しかしこのチャンスは彼らにとって屈辱のステージで終わる。

「志を持った3流は4流だからね」とプロデューサーがつぶやく。

 

その帰り道、4人は路上で演奏する。

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その場面がとてもいい。

 

弾きながらの4人の笑顔。これぞ音楽の原点だと言わんばかりに楽しそうに弾くさま。

 

私のようにバンドは趣味と決めて、週末に音楽仲間と小さなライブをやっているおじさんとしては拍手喝采の場面だった。

 

それはラストのホールの演奏会でもよく伝わってきた。

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みなさんには奏者としての才能がない」「みなさんの音楽は煙突から出た煙のようなもの。価値もない、意味もない、必要ない、記憶にも残らない」「煙のくせになんで音楽をやっているの?という手紙をくれた人(観客席で帽子かぶって見ていた女性?)を介して、作者が音楽に携わっている私たち視聴者(とりわけアマチュアミュージシャンなど)へ元気をくれるメッセージでもあった。

 

1点だけ腑に落ちなかったのは、(時間の関係で割愛されてしまったのか?)すずめ(満島ひかり)の従妹の中学生の男の子の行動。あれは少し無理があったような気がする。

 

それはさておき、総じてすばらしいドラマだった。

 

数多くの食事にまつわる名シーンがあったけれど、

カツ丼、おでん、ナポリタンの3つの場面がどれも切なく印象的。

おおむね4人の食事の場面は楽しくて、2人の食事の場面は切ないのが多かった。

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※会話の後ろで、ちょっとだけ聞こえるセリフもまた絶妙。

「う。おにぎり持った手で楽器さわっちゃってる」(すずめ)

「(楽なバイトって)戸籍を売るとか?」(真紀さん)

「穴が開いてなかったら揚げパン?」(すずめ)

とかw

また、セリフじゃないけど

家森さんが町を歩く小学生を目で追う場面とかも冒頭部分にちゃんとあるし、すずめちゃんが動揺してチェロのイントロを間違えてもみんな待ってるとか。。

 

などなど。

 

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劇中、4人がそれぞれ、大事な場面で、虚ろな目をするところがたまらんかった。

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(松さん、さすがの演技力)

 

以前に脚本家の坂元さんにスポットを当てた番組を見たけれど、まぁキャラクター設定に時間をかけてかけて・・。本を書くのはすごいスピード!

説得力ある脚本が生まれるまでを番組で追っかけていました。

 

詳細なプロットとキャラ設定、そしてそれを活かすための細やかな作りに脱帽です。さすが坂元さん!アリガトーショコラ。よかったらA(アー)もらえますか?

 

 

 

 

 

 

i 新聞記者 レビュー

先日吉祥寺にて「i 新聞記者」を観たので少し。

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まず、観終わった時の率直な感想は

①よくこれだけのものを編集して2時間に収めたなぁ。

②監督はあらかじめテーマを決めて望月記者を録っていったので、純粋なドキュメントとはちょっと違うかな。。

 

この2つ。

作品としてはじゅうぶん楽しめたし、現在の行政によるひどい部分はよく描かれていた。

 

取り上げていたのは

モリカケ問題

・伊藤詩織さんの性的暴力事件

辺野古基地

宮古島の弾薬庫

それから

・海外ジャーナリストたちから見た日本の報道体制

・政治部の記者と社会部の記者の現況

・警察による理不尽な圧力

などなど。

 

こんなに多くのことを盛り込まずともいいかな?と思ったけれど、それだけひどい事がたくさん起きていると言うのも伝えたかったのでしょう。

 

個人的には現政権を擁護している側、もしくは自民党(安倍政権)を支援している人たちの話なども取り扱って(誰も出演しないかもしれませんがw)もっと中立的なドキュメントにしてほしかった。

 

けれど、昨今の報道自体(圧力?)がひどいのも事実で、取り立てて今の政治やメディアの報道に無関心な層に投げかける意味はじゅうぶんにあると思う。

 

ただこれも残念な話だけれど、観に来ている人のほとんどは無関心層ではない人たちなんだろうと思われ。。

 

ちなみに私が見た吉祥寺アップリンク(スクリーン4:土曜の昼)では、座席数58がほぼ満席。(空席は3程度?)

 

同じような題材の「新聞記者」は7月公開から今もロングランをしていて、9月下旬の時点で動員数は40万ほどに達しているらしい。映画の興業としては成功したと言えるだろうけど40万人って「翔んでさいたま」(公開2か月で245万人)より全然少ないw

 

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数字で言うと、テレビと単純比較はできないけれど、、

NHKニュース7がビデオリサーチ調べで視聴率15~18%くらいで、およそ1500万人。

報道ステーションも11~14%あたりでやはり毎晩1000万人を超えている。

 

関心の高い40万人と 無関心な?お茶の間を含む1000万人。

 

望月記者の言葉で一番印象に残ったのは

「私のことを左翼とか言う人がいますが、もし左翼が政権を取ってその政治におかしな事があるようなら、それを記事にするだけなのにね」と言った内容のもの。

 

 

それと同じく印象に残ったのは、映像で流れたイワシの群れ。

 

監督が一番見せたかったのはイワシたちなのかなぁ。。

 

 

羊の木「映画版」:ネットフリックスで。

仕事は金、土、日と3連休だったけれど、金曜は午前中から病院。帰ってきたら午後3時を回っていた。遠出も買い物もせずに、夫婦してリビングでゆっくりネットフリックス鑑賞。

観たのは「羊の木」

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舞台は架空の漁村「魚深村(うおぶかむら)」。

そこに殺人犯で服役している6人を、市役所が極秘のプロジェクトで住まわせる(受け入れる)という変わった設定。

 

原作のマンガは今もって未読だけど、2017年に封切られた時に予告編だけ見て、ちょっと面白そうな印象だった作品。

 

ちなみに原作では仮釈放の人を11人も村が受け入れる話だけど、映画版は6人にアレンジされている。

 

村に(社会に)あまり馴染まない6人と、錦戸亮演じる役所の担当者が、いびつに歯車が噛み合わないまま?物語は進む。

 

まず見ている最中の感想として、それぞれのエピソードごとにキャラが立っていて面白かった。(個性派の役者さんたちも好演)

 

この原作(プロット)自体がかなり変わっているけれど、吉田大八監督のアレンジが加わって楽しめた2時間6分でした。

淡々としている部分がよかった映画だったので、話の流れが素晴らしいとか、展開に驚くとか、感動したとかはとくに無い。

 

どちらかと言えば左脳で「ふむふむ。それで?」と言う感じにちょっとずつ考え考えクライマックスまで見て「なるほど。うーん。そうかぁ・・まぁねぇ・・。」みたいに腕組みしながら(小さくうなずきながら)見た映画なので、特におすすめするほどでもない。

 

原作にどれだけ説得力があるのかは未読なのでわからないけど、この映画に関して言うと正直それほど伝わってこなかった。

 

と、いうのは私にとっては、殺人を犯してしまった6人の動機がなんとも希薄に感じたから。

 

逆に言えば、希薄な動機でも、何かのきっかけで、「人は人を殺してしまうのかもしれない」というようなところは恐ろしいけど。

原作者の1人、山上たつひこは「がきデカ」で有名だけど、それ以前に描いた「光る風」が秀逸で好き。

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もう一人の原作者の いがらしみきお氏は「ぼのぼの」で有名な漫画家だけど、私はちゃんと読んでいない。

 

面白かったのは、この映画(原作)に登場する「のろろ」と言う名の村の守り神

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この「のろろ」は村を守ると言うより、人の心の闇を見通すような神。

お祀りの時も、日常でも「のろろを見てはいけない」と村人は言う。

 

劇中、主要人物の中でひとりだけ、のろろ をじっと見ている者がいる。

彼は、のろろに救いを求めるわけでもなく、興味があるほどでもなく。

 

クライマックスの場面が、夜の岸壁なので、どうにも見えづらかったのが少し残念だが、のろろ に自分の何かを託すような?場面だった。

 

幼児性と犯罪。人が人を殺す時に持つ感情はどこかに幼児性に起因するような、そんな要素も入った映画でした。

 

社会不適合者にとっての「居場所」がテーマなのでしょうか。。そういう意味では取り立てて説教臭くも無いし、難しい話でもないながら、中身はけっこう深い作品でした。