娘と「MONSTER 浦沢直樹著」の感想を話したこと。
(このブログは数年前に某サイトに投稿したものを編集したものです)
それほど親しくない人から「趣味は何ですか?」と訊かれたら「バンドやっているので、ギターです」と答えると思うんだけど。
本当は人とのやりとりが好きなわけで。それがバンドだったり、音楽だったりってことで、言うなればバンドや音楽は媒体なんですね。
要するに音楽を聴くとか、絵画を見るとか、マンガを見るとか、演劇を観るとか、映画を観るとか・・・って全部、向こう側の(作った)人の偏り方が面白い。
それとは別に読書ってのもいいもので。もっと広く言えば「字を読む」ってことも好き。これも当たり前なことだけど向こう側に書いた人がいるわけで。これは文字で描かれた舞台(風景)や中の人たちを想像して楽しむことができる。(ある意味絵がないことが利点なわけですね)
中にある日常の機微や、創作の中に登場する人物の思いに共感するのもまた楽しい。
はたまたとんでもないプロットから思わぬ展開をして、感動的な場面に出くわすのも楽しい。
エンターテイメントに徹して楽しませてくれるものもあれば、感情移入してしまって涙があふれ出すなんてことも少なくない。(年のせいか?涙腺ゆるい)
今目の前にいない人(作家)だけど、こんなことを上手に描いている、こんな場面を想定している、それらを言葉巧みに表している。
親子や友人と名作を読んで(名曲を聴いて)話をするのもまた愉し。
ことバンドでやる音楽の場合はコピーして、解析して、カバーを作るときに、ただ聴いていた時よりもずっとずっとその中身(骨子)にふれることができて、なおさら楽しい。
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実は娘が19の頃に浦澤直樹氏の名作「MONSTER」を全巻貸して読ませた。
(と言ってももちろん強制的なものではないw)
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読み終わった後に感想まじえていろんな話をした。
私が最初に聞いた質問は
「で。何がMONSTERだと思った?」と言うタイトルの意味から。
それからいろいろと話をしていくと、、一番顕著な違いは感情移入する登場人物だった。(読まれた方はじゅうじゅうわかっていらっしゃると思うけれど)
このMONSTERには主人公の医師と、ヨハンとアンナと言う兄妹が登場する。
でもって、私にはふたりの子どもがいて、初めの子が男の子。二人目が話をした娘。
私は主人公の医師に感情移入して読んだ。
兄妹の妹として20年近く生きてきたうちの娘は妹アンナに感情移入して読んだ。
視点がちがうので、当然ながら感想の重心もちがうw
登場人物に関してはとりわけグリマーについて話した。グリマーは良い意味でも悪い意味でも、洗脳された集団に属していた「できそこない」的人物。
でも「できそこない」ゆえに、人の心が残っていて読者の琴線にふれる。
こう言う脇キャラについて、娘とはよく話す。「ワンピース」でのウソップとか「攻殻機動隊」のトグサとか、そのあたりについて娘と語り始めると夜が明けてしまうw
数年前にうちのツマさんが入院したときにこの本を全部持ってったら、夢中で読んでたっけ。( その感想はまた別で母親的視点からも加わってとても面白かった)
このMONSTERにはいろんな要素(作品のエッセンス)が含まれている。古き名画「ソフィーの選択」もしかり、中に出てくる絵本にはヨーロッパ(人類?)の黒歴史が含まれていたり。
※ちなみに「何がMONSTERだったの?」の私なりの答えは“子供の持つオレンジを時計仕掛けにしてしまう人たち”です。
最近の世の中はそんなモンスターママが増えた気がします。そしてそのママたちを洗脳したのは、TVと言う名のキンダーガーデンかもしれません。
攻殻機動隊 3作品
攻殻機動隊 S.A.C. 2nd GIG
役者はそろっている。 映像技術も最高。
音楽・音響もまちがいなし。 前作は大ヒット!
さぞや脚本・監督の神山氏は大変だったろうと思われる。
テーマは表向き「難民の独立革命」だが、その実はかなり辛らつで深い。
劇中の言葉を借りれば
「キング牧師やガンジーのような革命」をしようとする男の孤独。
素子が死を覚悟して抱擁する場面は涙が止まらなかった。
活劇の面白さを要素として考えると
○どれだけ悪役(ライバル)が魅力的か?
○どれだけ大変なことを解決しようとしているか?
そういう意味を含めて頭脳戦・心理戦・肉弾戦ともに見ごたえがあった。
印象的だったのは
・素子がまんまといっぱい食わされてしまう場面。
・バトーが1対1の肉弾戦でかなわない場面。
・9課の通信が途絶えてしまったときの場面。
クライマックスでは時間を忘れて見入ってしまった。
攻殻ファンをうならせる納得の出来栄え。
メンバーひとりひとりにスポットを当てたエピソードはちょっとウェット過ぎる感じもあったが、やはり出来はいい。
そんな意味も含めて、できればダイジェスト版でなく全編通して見なおしたい。
攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX The Laughing Man
TVシリーズはすでに観てたものの改めてこのDVDで「笑い男事件」を見てみると全容がよくわかりとても楽しめた。
一度観ただけでは作者の細やかな演出等が100%わからなかった私だが、こうして編集して見せてくれるととてもわかりやすい。
特にタチコマの進化に関するくだりは興味深い。そこにもう少し時間を割いてくれたなら(TVシリーズでは十分割いているのだが)120点。
なんと言ってもこの作品のよさは脚本の妙。
最後のアオイのセリフ「野球が下手ですから」には思わずにんまり。。
近年の映画・アニメ・マンガにあっては頭二つくらい飛びぬけている感がある。
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攻殻機動隊 Solid State Society
少し成長したトグサを中心に描かれていく本作。
いつものように練られた脚本。
テーマも重く、ラストの落ちも重厚。
キング・クリムゾンのアルバムを聞いたときのような印象ですらある。
ただ何かが足りない。
それはコチラが“攻殻慣れ”してきてしまったことによるものかもしれない。
菅野よう子氏のBGMや効果音がすばらしく、それに助けられているようにも感じられてしまった。前作までは融けていたのに。
タイトルはYMOのSolid State Surviverを文字ったものだが、なかなかシニカルでいい。
個人的にはトグサだけは「人のまんま」でいてほしかったなぁ。
ワンピースのウソップのように?勇気と知恵だけで立ち向かうフツウのヒトであってほしかった気がするのは私だけだろうか。
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「あっかんべェ一休」「バージョン」「石の花」坂口尚作品
あっかんべェ一休
とんちで有名な一休和尚の半生記。
彼の出生~禅を学ぶ修行僧時代が上巻で下巻は独り立ちしてから大往生まで。
天才世阿弥の芸に対する苦悩が並列して描かれているのもまたおもしろい。時代の庶民の様相を交えながら描いている力作。
あの梅原猛氏の仏教に関する書物を初めとして膨大な量の書物から出展されていることにも驚かされるが、著者の持つ無常観や人生観がこれほど如実に現れているのもめずらしいように思う。
下巻まで含めて、一貫した一休和尚のまっすぐな知的さが肌に伝わってくる。「とんち」と聞くと現代では上げ足取りやダジャレのようにも思えるかもしれないが、この話は一気に内側に(哲学へ)向かうシリアスなエピソードである。
特に破天荒でロックンロールな?一休和尚の言動には含蓄があり、是非ともゆっくりと読んでほしい一品である。
「欲深くなってはいけないということ」を忘れろ!「それを忘れなくては!?」という心を忘れろ!なんてことを考えてる「自分を忘れろ!」
ときます。
そんな禅問答の一片もとてもおもしろかった。
また実際に彼が詠んだとされる詩も随所にあってそれがまたいい。
坂口氏のマンガはいつも良質な文学を読んだような気持ちになる。
バージョン
1989年に描かれた坂口氏の長編3部作のうちのひとつ。
“我素”と呼ばれる進化と学習を続けるバイオチップ。
それは人類総体の意志を持つひとつの生命体。人類の過去すべてのデータを学習した我素が啓示を出すがごとく発する21の歌とは?そして“私”とは?“私たち”とは?
あのAKIRAに登場する鉄雄、ネットと融合する草薙素子の原型とも思える人物が登場している。 AKIRAファンはあの乗り物にもニヤリとするでしょう。
持っていかれますね。
話に力があります。
ラストは作者らしいファンタジックな演出により深く重いテーマも後味よく締めくくられている。
芳醇で重たいフルボディの赤ワインをゆっくりと飲み干した感がある。
さすが坂口氏。
そして
石の花
80年代中頃に書かれた大河ドラマ的漫画。第二次大戦中のナチス政権に侵攻を受けたユーゴスラビアが舞台。時代の濁流に翻弄されながらもまっすぐに生きる青年の姿。兄弟の出生とそれぞれの生き様。国のためって何だ?平和って何だ?と胸に深く刺さるストーリー。主人公のラストの語りかけはしみじみ泣ける。
坂口氏は「魚の少年」のような短編のファンタジーにも秀作が多いが、この作品には長編の重さ、深さはまさに超1級品。ヨーロッパ映画の秀作、ロシア文学の名著、はたまた重奏低音流れる近現代クラシックをゆっくりと堪能したかのような作品だと思う。
本当の意味での「教育の大切さ」が問われている。
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