今週のお題「怖い話」
一番怖いのは「人がやること」
それを題材にした話はたくさんある。
生霊?戦争?新型爆弾?
この話はナチスドイツによる大量殺りくである。
「アウシュビッツ死者たちからの告白」
恥ずかしながら、アウシュビッツ収容所の話は外観程度しか知らなかった。
このNHKスペシャルの中で写される映像と語られた話によってさらに輪郭がはっきりした。
番組はこのアウシュビッツで「ゾンダーコマンド」と呼ばれた “同胞をガス室へ誘導する役割や死体処理などを担ったユダヤ人特殊部隊”の人たちが地中に埋めた手紙(手記)の話。
ゾンダーコマンドたちは同胞から、同胞の子供たちから「裏切者」と呼ばれた。
それでも生き抜いた。そんな男の手記。
死体処理の映像などは目を覆うほどだった。
そのゾンダーコマンドたちの手記もほとんどが地中で何十年も経っていたため、激しく劣化していて文字が解読できなかった。それが、昨今のデジタル技術を使って復元され、解読された。
主に3人の男の手記にスポットが当てられた。
「自分の家族をガス室送りにしても、生き延びた男」の話は強烈だった。
ナチスを憎みつつも、自分の罪を負い、苦しむさまの中に
「オレは生きて、復讐してやるんだ」という決意が書かれていたという。
誰もが死にたくはない。
しかし家族や同胞を殺すための行為をし、その遺体を燃やし、遺骨を砕き、地中へ埋める作業を強いられた。そして生き延びた。
そんな日々の中、思ったことが手記に鮮烈に描かれていた。
同じ作業をしているゾンダーコマンドと話して、反逆を計画してもうまく行かず、結果旧ソ連軍が解放するまで繰り返した。
番組の終盤に、1人生き延びたその男の後世を追ったドキュメントが描かれていた。
アウシュビッツで何をしてきたのか?
何が起きていたのか?
彼は娘に、一切語らずに過ごし、そして天寿をまっとうした。
その娘に番組担当者はこの手記の内容を話した。
私は、その娘の言葉に胸をうたれた。
手記の内容を知った娘はショックを受けながらも語った。
「父の復讐は、遂げられましたのでしょう。終戦後に生き残った家族と自分が幸せに生きたことで。父はいつもユーモアを語り、笑顔の絶えない人でした」という話。
「こんなにひどい目にあわされてもオレは幸せを勝ちとったんだ」
これこそが奴らに対する復讐だったと。。
昨今、人気を博している企業戦士のドラマとは大違いの話じゃないか?
何が「倍返し」だ。やられたらやり返す?あまりにもチープすぎる。
それじゃ同じ土俵で相撲を取ってるだけで、何も解決しない。
もし戦争をこの世からなくしたいと願うなら、こう言ったチープな「復讐心」こそ要らない。