宮部みゆきの本は社会派の現代もの、SF近未来もの、時代ものといろいろあるけれど
歳のせいか、時代ものが一番いいと感じる。
今回の長編「おまえさん」は読みごたえ十分。
登場人物は皆「生きた人」である。
ロシア文学とりわけドストエフスキーのような「人の持つ多面性」がそれぞれに描かれている。まさに和風「罪と罰」だった。
史乃、佐多江、おせつ、お仲、おきえ、と言った女性キャラは物語が進むにつれて、性(さが)とか業の深さ、したたかさ、弱さ、愛らしさ、などなどが、それぞれに現れる。
小さな江戸の中にあって、わずかながらでも格差はあるし、その立場を踏まえるがゆえの機微も描かれている。
そんな江戸の庶民の「お金」「男と女」「罪」「業」「商売」「格差」にまでにかかわる長い話。
10時間くらいの名人による「人情噺」を聞いてるかのようで、運びは筆力を存分に発揮。
※登場人物が多いので、こういう図があるとうれしい。
その途中「うーむ」と考えてしまい、また途中「あはは」と笑い、クライマックスで「おまえさん」と言う言葉が出てきた時にはどうしようもなく胸が痛かった。
この物語のテーマは「居場所」だと思う。
人が「居場所」を見つけ、「居場所」を追われ、時に自ら「居場所」を去る。そしてまた「居場所」を求める。。
個人的には「残り柿」と「富くじを当てた男」のエピソードがとてもよかった。
”幸せはお金じゃ買えないよ”と言うお説教を、今の若い世代にオヤジの私が何回も言うより、この本をしっかりと読んでもらった方がどれだけ早いことだろう。。
まぁ若い人が読んでもなぁ。。
「わっかるかなぁ・・わっかんねーだろーなぁ。。」
なんて昭和の芸人のセリフがよみがえった。
現在、「おまえさん」ロスにて放心状態。。