昭和の忘れもの。

1960年生まれの青ん坊語り。

この世界の(さらにいくつもの)片隅に

 週末にツマさんと映画を観に行こうと話していたものの。。

いろいろ探してみても、なかなか決まらず。

 

結局、「この世界の片隅に」の長尺版を観てきた。

前回の短尺版は2017年の1月に観た。

 

aonbo.hatenablog.com

 

今回は2019年の2月に公開されたもの。

主な違いは ”白木りん”と言う女性の(↓画像右)エピソードが加わったこと。

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白木りんの話が加わると主人公の夫婦のエピソードがより深まる。

 

すずちゃんのヤキモチのなんて可愛いことw

 

前作ではちょっとわからなかった周作とりんの二人の関係がより細かくわかる。

(とは言っても、原作を読んでいれば、わかっていることなんだけど)

 

結果、2時間50分ほどの長尺版となったがとてもよかった。

 

2つの編集を見比べるもなく、この映画のテーマは戦時中の市民(庶民)の生活であり、”すず”という女性と、彼女を取り巻く数人の女性の内面がとてもよく描かれている。

 

まぁ、思ったとおり、前作と同じ個所で、涙腺崩壊。。

いや、正直に書くと、冒頭のコトリンゴさんの歌が流れてきた時、すでにウルウルきてしまった。

 

♪~ 悲しくて 悲しくて とても やりきれない

    このやるせない モヤモヤを 誰かに 告げようか~♪

 

大切な人が爆死してしまっても、明日はやってくる。

 

その明日もまた国益のために?多くの国民が死傷していく。

 

こんなバカげた、まさに本末転倒なことを人は何度も繰り返している。

 

それでも市民は明日を信じて、今日を生きる。

 

♪~この限りないむなしさの 救いはないだろうか~♪

 

 

 

スタジオ「プリウス」1000回歌っても文句無し。

私はアマチュアバンドをずいぶんと長くボーカルやっているけれど、うちのツマさんは違う。ずっと見る側の人。

 

そんなツマさんに課題曲を与えて「これ、ライブで歌ってよ♪」と言ったら、本人は「とても無理。だって下手だもん。」と即答が返ってきた。

 

とある日曜の昼下がり。自分のバンドでやる曲を口づさんでいた。

 

横でツマさんが吹き出した。

ツマさん「なーに?その曲?なんだかひどい歌ね」

私「うーん、、まだ練習中だから。。」

ツマさん「練習不足だと、音痴なのね~」

からかい半分だけど本音だ。

私「(音痴?)うーん、いつも100回は歌わないと人前では歌えないよ。(この曲は)まだ10回くらい?これからこれから(笑)」

 

ごくごく当たり前のことだけれど、歌は(天才歌手をのぞいて)練習しなきゃうまくならない。

 

逆に言えば、歌は練習すればうまくなる!

(旦那(私のこと)が100回練習してから人前で歌うなら、私は300?500回くらい練習したら人前でちゃんと歌えるかも?)

うちのツマさんってば、妙に気合の入った決断をしたそうな。(本人後日談)

 

で、前に課題として挙げた曲。

これを車の移動の際にカーオーディオでずーっとループ再生したらしい。

 

日本語の歌ならまだしも、歌詞は英語。元々知ってた曲でもない。

ネットで調べた歌詞カードはあるけど、流れるメロディの中で、

どのタイミングで単語を切って、伸ばして、どこで息吸って、どこで張り上げるのか?

まったくわからないところからスタート。

 

ちょうどその頃、ツマさんは車で毎週行く仕事があったので往復3時間の道のりの間中、ずっとその曲をかけて聞いていたらしい。(これまた本人後日談)

 

3時間の往復に加えて、近場のお買い物に行く際も、ずっとこの曲。

頭の中で歌詞と「音」がなんとなく一致するまで、まずは聞きまくったとのこと。

 

おそらく2、300回は聞いただろう頃に歌詞カードを見たら、歌詞の運びがわかってきた。

歌詞の運びがわかってきたら、「聞こえてきたように歌う」ことにも慣れてきた。

 

いわゆる「歌詞まわし」が理解できたわけで、それから彼女は歌う練習に入った。

場所はマイカー「プリウス」の車内。

 

通称スタジオ「プリウス

 

ここで彼女は歌った。歌っただけでなく、自分の歌とカーオーディオの歌をいっしょにスマホで録音した。それを聞いて、、ガッカリした。

(なんだ、歌えるようになったと思って聞いてみたら、ひどい!)

ただ、そこでも例の会話を思い出したそうな。

(まだ歌覚えてから100回も歌ってない)

それからもスタジオプリウスで100回くらい歌っては(ちょっとは上手くなったかな?と思って)録音した。

それでもまたガッカリ。また気合を入れなおす。その繰り返しだったそうな。(本人…)

 

何百回歌ったのかわからなくなってた頃に、私にポロっと言った。

「ねぇ、カラオケボックスに行かない?」

ふたりでカラオケボックスに行って、初めて私のギターをバックに例の歌を歌った。

 

おどろいたのは私だ。

「あれー!もうマスターしちゃってるじゃん!!」

彼女は私に褒められても、得意な顔ひとつ見せないw

「うーん、もう一回歌わせて、、ちょっと録音するから」

カラオケボックスで数回録音したものを、帰りの車の中でまた聞いている。

 

「飽きる?」とたずねたら

「だんだんと、少しずつだけど、歌えていくのがわかってきたから、全然飽きない!」と彼女。

 

それから1~2か月経って飛び入り的に彼女は歌った。

いつもの音楽仲間から、ほんとにたくさんの拍手をもらった。

でも歌い終わった彼女は困ったような笑顔で「ヒザがふるえて止まらないよー。。」と言ってた。

 

カーオーディオの使い方としちゃ、マニアックだけど、誰にもじゃまされず、迷惑もかけずに車でずーっと同じ歌の練習している人もいるって話。

 

コレがかれこれ6年以上前の話。以来彼女のオハコになってる。

 

「胸いっぱいの愛を」


Whole Lotta Love [ Aco.cover ]

 

 でも、いきなり「500回は歌ってからじゃないと人前じゃ歌えない」なんて言われたら、ドン引きだわなw

 

 

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江戸を舞台の「罪と罰」。おまえさん(宮部みゆき著)読了。

宮部みゆきの本は社会派の現代もの、SF近未来もの、時代ものといろいろあるけれど

歳のせいか、時代ものが一番いいと感じる。

 

今回の長編「おまえさん」は読みごたえ十分。

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登場人物は皆「生きた人」である。

ロシア文学とりわけドストエフスキーのような「人の持つ多面性」がそれぞれに描かれている。まさに和風「罪と罰」だった。

 

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史乃、佐多江、おせつ、お仲、おきえ、と言った女性キャラは物語が進むにつれて、性(さが)とか業の深さ、したたかさ、弱さ、愛らしさ、などなどが、それぞれに現れる。

 

小さな江戸の中にあって、わずかながらでも格差はあるし、その立場を踏まえるがゆえの機微も描かれている。

 

そんな江戸の庶民の「お金」「男と女」「罪」「業」「商売」「格差」にまでにかかわる長い話。

 

10時間くらいの名人による「人情噺」を聞いてるかのようで、運びは筆力を存分に発揮。

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※登場人物が多いので、こういう図があるとうれしい。

 

その途中「うーむ」と考えてしまい、また途中「あはは」と笑い、クライマックスで「おまえさん」と言う言葉が出てきた時にはどうしようもなく胸が痛かった。

 

この物語のテーマは「居場所」だと思う。

 

人が「居場所」を見つけ、「居場所」を追われ、時に自ら「居場所」を去る。そしてまた「居場所」を求める。。

 

個人的には「残り柿」と「富くじを当てた男」のエピソードがとてもよかった。

 

”幸せはお金じゃ買えないよ”と言うお説教を、今の若い世代にオヤジの私が何回も言うより、この本をしっかりと読んでもらった方がどれだけ早いことだろう。。 

まぁ若い人が読んでもなぁ。。

「わっかるかなぁ・・わっかんねーだろーなぁ。。」

なんて昭和の芸人のセリフがよみがえった。

 

現在、「おまえさん」ロスにて放心状態。。